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野獣の青春 63日活 ■監督 鈴木清順 ■原作 大藪春彦 ■脚本 池田一郎/山崎忠昭 ■撮影 永塚一栄 ■美術 横尾嘉良 ■出演 宍戸錠/渡辺美佐子/川地民夫/木島一郎/鈴木瑞穂 いわゆる清順美学が初めて画面に登場した記念碑的作品である。 例えばファースト・シーンとラスト・シーンが白黒画面になっているのだが、そこにある赤い花だけがカラーのアップで浮かび上がっているといった映像や、暴力団事務所がガラス張りになっていたり、別な暴力団事務所は映画のスクリーンの裏側にあって画面には常に映画が流れていたり、また部屋から出ると庭が黄色い砂嵐の舞う荒野になっているといったふうな実験的なセットが登場してくるのである。 こうしたセットのなかで命をやりとりするドラマが繰り広げられることで独特の映像空間が出来上がり、清順流の「諸行無常」ともいうべき空気が漂い始める。 単なる暴力やアクションだけではない、人間の愚かしさや哀しみといったものまでもがドラマの蔭から貌を覗かせ始めるのだ。 川地民夫が普段は女のような優男なのだが、母親がパンパンで、そのことについて一言でも触れられると相手の顔をカミソリでスダレのように切り刻むといった、狂的で不気味なヤクザを好演している。 このような個性的なキャラクターが登場することで俄然映画に鋭さが加わってくる。 アクション映画にとってこうした役柄の造型は重要な要素のひとつである。 鈴木清順はこういった個性的な人物を登場させるのがうまい監督である。 こうしたところにも清順映画の大きな魅力が隠されているのである。 関連記事 |
野良猫ロック・暴走集団71 71ホリ・プロ/日活 ■製作 笹井英男/岩沢道夫/真下武雄 ■監督 藤田敏八 ■脚本 永原秀一/浅井達也 ■撮影 萩原憲治 ■美術 千葉和彦 ■音楽 玉木宏樹 ■出演 原田芳雄/梶芽衣子/藤竜也/司美智子 夏夕介/地井武雄/郷瑛治 「野良猫ロック」シリーズはつごう5本が作られているが、この「暴走集団71」は最後の作品である。 第1作の「女番長 野良猫ロック」は和田アキ子が主演で、彼女の歌謡曲が主体になるような企画を狙ったようだが、監督の長谷部安春はその狙いを意識的にはずして、かなり自由な発想でこの映画を作っている。 主役の和田アキ子はほとんど顔見せ程度で、事実上は梶芽衣子、藤竜也らが話の中心になっている。彼らのハチャメチャな不良ぶりが痛快に描かれる。 そして第2作目を引き継いだのが藤田敏八監督で、さらにアナーキーな味付けをすることでシリーズの大まかな骨格が出来上がる。 以後第5作までこのふたりの監督によって快調に突っ走っていくことになる。 日活はすでに60年代の活力は失って、黄金時代を支えていたスターたちも撮影所を去ってすでになく、そんな空白の時間のなかからあだ花のごとく生まれてきたのがいわゆる日活ニュー・アクションと呼ばれる一連の暴力映画であった。
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女囚701号・さそり 72東映東京 ■監督 伊藤俊也 ■原作 篠原とおる ■脚本 神波史男/松田寛夫 ■撮影 仲沢半次郎 ■美術 桑名忠之 ■音楽 菊池俊輔 ■出演 梶芽衣子/夏八木勲/扇ひろ子/渡辺文雄/横山リエ 雑誌ビッグコミックに連載された篠原とおるの人気劇画「さそり」を原作に伊藤俊也監督が鮮やかな映画に仕立て上げた。 伊藤俊也監督のデビュー作品である。 70年から71年にかけて作られた「野良猫ロック」シリーズ全作品に出演し、映画のシンボル的存在であった梶芽衣子が「さそり」の主人公を演じている。 「野良猫ロック」での梶芽衣子は不良少女グループの女番長役を好演したが、その鋭い刃物を思わせるようなキャラクターはまさに「さそり」の主人公に通じるものであった。 伊藤監督はいち早くそこに注目をし、彼女を主役に抜擢する。 そして梶芽衣子は期待通りみごとな「さそり」を造型することになる。 金儲けのために利用され、裏切られた恋人への復讐に燃える女囚松島ナミを深い怨念をこめて演じている。 彼女の刺すように鋭い眼差しが怨みの深さを感じさせて印象に残る。 また伊藤俊也監督も鈴木清順を思わせるような華麗な様式美を展開させるなどと意欲的な演出を行っている。 こうして出来上がった映画「さそり」は予想以上のヒットとなってシリーズ化され、つごう6作品が作られることになる。 伊藤俊也監督は第3作までを監督し、梶芽衣子は第4作まで演じたが、第5作では多岐川裕美が、第6作では夏樹陽子が主演するなどと次第に本来の路線から外れたものになっていく。 これはシリーズ化されたものがもつ宿命かもしれないが。 注目すべきは第4作で「野良猫ロック」シリーズの長谷部安春監督が演出しているということだ。 どこまでも「野良猫ロック」との縁が深いということである。 余談になるが、この映画で梶芽衣子が主題歌「怨み節」を唄っているが、それを聴いて彼女の歌のうまさに感心したものである。 以来、この歌は私の愛唱歌のひとつになっている。 メロディーと歌詞のよさはまさに「怨歌」である。 関連記事 |
蘇る金狼 79東映/角川事務所 ■製作 角川春樹 ■監督 村川透 ■原作 大藪春彦 ■脚本 永原秀一 ■撮影 仙元誠三 ■音楽 鈴木清司 ■出演 松田優作/風吹ジュン/佐藤慶/成田三樹夫 小池朝雄/草薙幸二郎/千葉真一/真行寺君枝 岩城滉一/加藤健一/安部徹/岸田森/待田京介 松田優作と「遊戯シリーズ」のスタッフが角川事務所の資本下で大藪春彦の原作に挑んだ作品である。 「遊戯シリーズ」でそれまでになかったようなハード・ボイルドの世界を描いてきたチームにとっては大藪春彦ものと出会うことは必然のコースであったにちがいない。 そういった意味では実にタイムリーな企画であったといえよう。 角川の商魂と「遊戯シリーズ」の方向性がピタリとはまったといったところであろうか。 こうして作られた「蘇る金狼」は「遊戯シリーズ」をさらにパワーアップしたような作品となった。 松田優作のアクション俳優としてのひとつの頂点を示した作品といえよう。 彼のアクションが実にカッコよく映像化されている。 日本ではなかなか成立しにくいハードボイルドの世界がみごとに映像として表現されている。 一見荒唐無稽とも思われる大藪春彦の犯罪世界が松田優作という肉体を借りることで納得できうるだけのものになっている。 おそらくこれほどハードボイルド・アクションの似合う俳優は今後も現れることはないだろう。 そう思わせるものを松田優作は肉体から発散しているのだ。 関連記事 |
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