ベスト・オブ・アクション
 
  
 
 
 錆びたナイフ 58日活 
  
 監督・脚本 舛田利雄 原作・脚本 石原慎太郎   
 撮影 高村倉太郎 音楽 佐藤勝  
 出演 石原裕次郎/北原三枝/小林旭/宍戸錠  
        杉浦直樹/ 白木マリ/安井昌二  
  


 石原裕次郎初期アクション映画の傑作。 
 兄、石原慎太郎が原作、脚本を書いている。 
 「狂った果実」「俺は待ってるぜ」といった代表作に続いて裕次郎のために書かれたこの作品は裕次郎の魅力を知り抜いた石原慎太郎ならではのものといえよう。 
 都会的な光と影をあわせもった裕次郎の魅力が画面いっぱいにあふれている。 
 この年(昭和33年)、映画人口は11億人を越え、いわゆる映画の黄金時代をむかえた年である。 
 なかでも裕次郎の人気は群を抜いており、この年だけでも裕次郎は「錆びたナイフ」を含めて9本の映画に主演している。 
 そしてそのすべての映画が大ヒットを記録するという、まさに裕次郎の黄金時代でもあった。 
 「錆びたナイフ」は映画のみならず主題歌もヒットをして、哀愁のあるメロディーが毎日のように流れていたことを想い出す。 
 当時小学生だった私もこの曲をよく口ずさんだものである。 
  
 この映画には当時まだ人気のでていなかった小林旭と豊頬手術をする前の宍戸錠が裕次郎の弟分として出演しており、どちらもやくざによって悲惨な殺され方をしたのが印象に残っている。 
 そのやくざの親分を杉浦直樹が演じているのだが、彼の印象も強烈だった。 
 冷酷なやくざの杉浦が殺人容疑で警察に逮捕され、取り調べが進んでいる最中に黒幕が差し入れた毒饅頭をそれと知りながら口にするときの鬼気迫った表情はショッキングであった。 
 こうした陰謀のリアルさに世の中の得体の知れない怖さを初めて実感したことを今でも鮮明に憶えている。 
 
 
 
 
 赤いハンカチ 64日活 
  
 監督・脚本 舛田利雄 脚本 小川英/山崎厳 撮影 間宮義雄  
 美術 千葉和彦 音楽 伊部晴美  
 出演 石原裕次郎/浅丘ルリ子/二谷英明/金子信男/芦田伸介 
  
  


 「錆びたナイフ」が初期アクション映画の傑作だとすれば、こちらは日活時代後期の傑作といえよう。 
 監督は同じく舛田利雄である。 
 ここでも裕次郎は隠された陰謀によって人生を狂わせられ、愛する女性ともけっして結ばれることのない宿命を背負わされた孤独な男を演じている。 
 そしてその傷をひきずりながら、陰謀の核心へと迫って行く。 
 だが、けっして彼の孤独が癒されることはない。 
 異国情緒あふれた港町横浜を舞台に繰り広げられるこの作品は、日活アクション映画が到達したひとつの頂点といってもいいものだ。 
 本来は歌謡曲「赤いハンカチ」のヒットにともなって企画された作品ではあったが、企画もの歌謡映画の枠を越えた良質のムード・アクションとなっている。 
 
 
 
 
 野獣の青春 63日活 
  
 監督 鈴木清順 原作 大藪春彦 脚本 池田一郎/山崎忠昭  
 撮影 永塚一栄 美術 横尾嘉良  
 出演 宍戸錠/渡辺美佐子/川地民夫/木島一郎/鈴木瑞穂 
  
 


 いわゆる清順美学が初めて画面に登場した記念碑的作品である。 
 例えばファースト・シーンとラスト・シーンが白黒画面になっているのだが、そこにある赤い花だけがカラーのアップで浮かび上がっているといった映像や、暴力団事務所がガラス張りになっていたり、別な暴力団事務所は映画のスクリーンの裏側にあって画面には常に映画が流れていたり、また部屋から出ると庭が黄色い砂嵐の舞う荒野になっているといったふうな実験的なセットが登場してくるのである。 
 こうしたセットのなかで命をやりとりするドラマが繰り広げられることで独特の映像空間が出来上がり、清順流の「諸行無常」ともいうべき空気が漂い始める。 
 単なる暴力やアクションだけではない、人間の愚かしさや哀しみといったものまでもがドラマの蔭から貌を覗かせ始めるのだ。 
  
 川地民夫が普段は女のような優男なのだが、母親がパンパンで、そのことについて一言でも触れられると相手の顔をカミソリでスダレのように切り刻むといった、狂的で不気味なヤクザを好演している。 
 このような個性的なキャラクターが登場することで俄然映画に鋭さが加わってくる。 
 アクション映画にとってこうした役柄の造型は重要な要素のひとつである。 
 鈴木清順はこういった個性的な人物を登場させるのがうまい監督である。 
 こうしたところにも清順映画の大きな魅力が隠されているのである。 
  
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 殺しの烙印 67日活 
  
 監督 鈴木清順 脚本 具流八郎 撮影 永塚一栄 
 美術 川原資三 音楽 山本直純 
 出演 宍戸錠/小川万里子/真理アンヌ/南原宏治/玉川伊佐男 
  
  


 「野獣の青春」をさらに洗練させたような映画である。 
 映画のなかに監督やスタッフの遊びの精神が充満しており、その自由な発想が独特の映画世界を作り上げ、不思議な魅力を放っている。 
 ちょっと強引な喩えになるかもしれないが、ゴダールの「気狂いピエロ」に仏教的な無常観をプラスしたような映画といった印象をもっている。 
 数あるハードボイルド映画のなかでも傑出した映画であるが、この映画が公開されたとき、当時の日活社長、堀久作によって「訳のわからない映画をつくる監督」として一方的にクビを切られることになってしまう。 
 まったく無理解も甚だしい暴挙であるが、後にそれを巡って長い法廷闘争が続けられることになり、鈴木清順監督は10年もの長きにわたって映画が撮れなくなってしまう。 
 そのことがかえすがえすも残念なことであった。 
 
 
 
 
 打倒ノックダウン 60日活 
  
 監督 松尾昭典 脚本 宮田輝明/柏木和彦 
 撮影 藤岡粂信 音楽 山本直純  
 出演 赤木圭一郎/二谷英明/稲垣美穂子 
       山岡久乃/大坂志郎/岡田真澄  
  


 赤木圭一郎ほどボクサーが似合う俳優はいない。 
 筋肉質の引き締まった身体がいかにも鍛えたボクサーといった雰囲気を醸し出している。 
 そしてけっして軽快な動きではなく、むしろどちらかといえば動きの硬いアクションで撃ち合うボクシングの試合はよりほんとうらしさを感じさせるものであった。 
 映画としての出来不出来はどうだったか、あまり記憶にはないが、とにかく彼のボクサーとしてのカッコ好さが強く印象に残る映画であった。 
 
 
 
 
 アゲインAGAIN 
 84ニュー・センチュリー・プロデューサーズ/キネマ旬報社 
  
 製作 岡田裕/黒井和男 監督 矢作俊彦  
 撮影 横木安良夫/久米田年明 音楽 宇崎竜童  
 出演 宍戸錠/藤竜也/榎木兵衛/川地民夫 
  


 石原裕次郎、小林旭、赤木圭一郎、高橋英樹、渡哲也、宍戸錠、二谷英明、和田浩治、浅丘ルリ子、吉永小百合といった日活黄金時代を彩ったスターたちの映画37本から選ばれた名場面がつぎつぎに登場、まさに日活版「ザッツ・エンターテインメント」である。 
 日活映画とともに青春を過ごしたものにとってはこたえられない映画だ。 
 日活映画フリークの作家、矢作俊彦が監督、脚本を務めていることからも想いの深さが伝わってくる。 
 映画の案内役として宍戸錠が再びあの懐かしの「エースのジョー」に扮して登場、昔の仲間たちを訪ね歩くという構成になっている。 
 何度見返しても飽きることがない。 
 そして見るたびにあの頃の華やいだ雰囲気が蘇ってくる。 
 
 
 
 
 野良猫ロック・暴走集団71 71ホリ・プロ/日活 
  
 製作 笹井英男/岩沢道夫/真下武雄 監督 藤田敏八  
 脚本 永原秀一/浅井達也 撮影 萩原憲治  
 美術 千葉和彦 音楽 玉木宏樹  
 出演 原田芳雄/梶芽衣子/藤竜也/司美智子 
       夏夕介/地井武雄/郷瑛治 


 「野良猫ロック」シリーズはつごう5本が作られているが、この「暴走集団71」は最後の作品である。 
 第1作の「女番長 野良猫ロック」は和田アキ子が主演で、彼女の歌謡曲が主体になるような企画を狙ったようだが、監督の長谷部安春はその狙いを意識的にはずして、かなり自由な発想でこの映画を作っている。 
 主役の和田アキ子はほとんど顔見せ程度で、事実上は梶芽衣子、藤竜也らが話の中心になっている。彼らのハチャメチャな不良ぶりが痛快に描かれる。 
 そして第2作目を引き継いだのが藤田敏八監督で、さらにアナーキーな味付けをすることでシリーズの大まかな骨格が出来上がる。 
 以後第5作までこのふたりの監督によって快調に突っ走っていくことになる。 

 日活はすでに60年代の活力は失って、黄金時代を支えていたスターたちも撮影所を去ってすでになく、そんな空白の時間のなかからあだ花のごとく生まれてきたのがいわゆる日活ニュー・アクションと呼ばれる一連の暴力映画であった。 
 激しい暴力抗争をリアルに描くこうした映画群の流れを背景にこのシリーズが作られたが、それらの暴力映画に見られるような陰々滅々とした暗さはなく、突き抜けたような明るさが特徴であった。 
 時代を反映した閉塞状況のなかでエネルギーを持て余した若者たちの無為な行動や犯罪が軽いタッチで描かれる。 
 それは束の間訪れた泰平にどう対処すればいいのか分からない若者たちの戸惑いと苛立ちでもあったのだ。 
 そして結局は自滅していくしかないという物語がはからずも時代の気分と重なり合って隠花植物のごとき栄光を担うようになるのである。 
 実際、これらの作品と前後して第2作に出演していた前田霜一郎という俳優が当時「ロッキード事件」の渦なかにあった右翼の大物、児玉誉士夫の邸に小型飛行機で突入するという事件が起きた。 
 特攻隊員のような衣装を纏ってのまるで映画のいちシーンのような自爆であった。 
 事件と映画に直接的な関係はないとはいうものの、映画の内容の延長のようなこの事件のことは強く印象に残っている。 
 結局「野良猫ロック」シリーズはこうした混迷の時代を見事に象徴した映画であったのだ。 
 そしてこの「暴走集団71」によってシリーズは終結し、その気分は同じく藤田敏八監督の手になる「八月の濡れた砂」へと受け継がれていくことになるのである。 
  
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 女囚701号・さそり 72東映東京 
  
 監督 伊藤俊也 原作 篠原とおる 脚本 神波史男/松田寛夫 
 撮影 仲沢半次郎 美術 桑名忠之 音楽 菊池俊輔 
 出演 梶芽衣子/夏八木勲/扇ひろ子/渡辺文雄/横山リエ 
  
 


 雑誌ビッグコミックに連載された篠原とおるの人気劇画「さそり」を原作に伊藤俊也監督が鮮やかな映画に仕立て上げた。 
 伊藤俊也監督のデビュー作品である。 
 70年から71年にかけて作られた「野良猫ロック」シリーズ全作品に出演し、映画のシンボル的存在であった梶芽衣子が「さそり」の主人公を演じている。 
 「野良猫ロック」での梶芽衣子は不良少女グループの女番長役を好演したが、その鋭い刃物を思わせるようなキャラクターはまさに「さそり」の主人公に通じるものであった。 
 伊藤監督はいち早くそこに注目をし、彼女を主役に抜擢する。 
 そして梶芽衣子は期待通りみごとな「さそり」を造型することになる。 
 金儲けのために利用され、裏切られた恋人への復讐に燃える女囚松島ナミを深い怨念をこめて演じている。 
 彼女の刺すように鋭い眼差しが怨みの深さを感じさせて印象に残る。 
 また伊藤俊也監督も鈴木清順を思わせるような華麗な様式美を展開させるなどと意欲的な演出を行っている。 
 こうして出来上がった映画「さそり」は予想以上のヒットとなってシリーズ化され、つごう6作品が作られることになる。 
 伊藤俊也監督は第3作までを監督し、梶芽衣子は第4作まで演じたが、第5作では多岐川裕美が、第6作では夏樹陽子が主演するなどと次第に本来の路線から外れたものになっていく。 
 これはシリーズ化されたものがもつ宿命かもしれないが。 
 注目すべきは第4作で「野良猫ロック」シリーズの長谷部安春監督が演出しているということだ。 
 どこまでも「野良猫ロック」との縁が深いということである。 
  
 余談になるが、この映画で梶芽衣子が主題歌「怨み節」を唄っているが、それを聴いて彼女の歌のうまさに感心したものである。 
 以来、この歌は私の愛唱歌のひとつになっている。 
 メロディーと歌詞のよさはまさに「怨歌」である。 
  
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 処刑遊戯 79東映セントラルフィルム 
  
 監督 村川透 脚本 丸山昇一 
 撮影 仙元誠三 音楽 大野雄二 美術 佐谷晃能 
 出演 松田優作/青木義朗/りりィ/佐藤慶/森下愛子 
             山西道広/阿藤海/片桐竜次/トビー門口/山本麟一 
  


 村川透監督と松田優作のコンビによる「遊戯シリーズ」の3作目。 
 このシリーズは「最も危険な遊戯」「殺人遊戯」そして本作とつごう3本が作られている。 
 松田優作の日本人離れした肉体と風貌を最大限に生かしたハード・ボイルド・シリーズである。 
 個性的な殺し屋、鳴海昌平に扮した松田優作の活躍がスタイリッシュな映像で描かれており、松田優作ファンにとってはいつまでも記憶に残るシリーズにちがいない。 
 もともとはB級プログラム専門の製作会社「東映セントラルフィルム」の第1回作品として作られたもので、B級プログラムらしい荒さが適度な味わいになっている。 
 
 
 
 
 蘇る金狼 79東映/角川事務所 
  
 製作 角川春樹 監督 村川透 原作 大藪春彦 
 脚本 永原秀一 撮影 仙元誠三 音楽 鈴木清司 
 出演 松田優作/風吹ジュン/佐藤慶/成田三樹夫 
         小池朝雄/草薙幸二郎/千葉真一/真行寺君枝 
       岩城滉一/加藤健一/安部徹/岸田森/待田京介 


 松田優作と「遊戯シリーズ」のスタッフが角川事務所の資本下で大藪春彦の原作に挑んだ作品である。 
 「遊戯シリーズ」でそれまでになかったようなハード・ボイルドの世界を描いてきたチームにとっては大藪春彦ものと出会うことは必然のコースであったにちがいない。 
 そういった意味では実にタイムリーな企画であったといえよう。 
 角川の商魂と「遊戯シリーズ」の方向性がピタリとはまったといったところであろうか。 
 こうして作られた「蘇る金狼」は「遊戯シリーズ」をさらにパワーアップしたような作品となった。 
 松田優作のアクション俳優としてのひとつの頂点を示した作品といえよう。 
 彼のアクションが実にカッコよく映像化されている。 
 日本ではなかなか成立しにくいハードボイルドの世界がみごとに映像として表現されている。 
 一見荒唐無稽とも思われる大藪春彦の犯罪世界が松田優作という肉体を借りることで納得できうるだけのものになっている。 
 おそらくこれほどハードボイルド・アクションの似合う俳優は今後も現れることはないだろう。 
 そう思わせるものを松田優作は肉体から発散しているのだ。 
  
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