1999年1月 NO.1
 
 
 
 
1/1 煙突の見える場所
(57スタジオ8プロ)
 
  
 
 かつて東京の千住付近にお化け煙突と呼ばれる日本一高い煙突がそびえ立ち、その存在のユニークさから下町に住む人々に親しまれていた。 
 「お化け煙突」という奇妙な名称は本来は4本ある煙突が眺める角度によって1本に見えたり2本に見えたりとさまざまに変化することからつけられたものである。 
 これは現在の千住桜木町1丁目にあった東京電力千住火力発電所の高さ83.8メートルもある巨大な煙突で、大正15年1月に建造されたものだ。 
 映画「煙突の見える場所」は椎名麟三が昭和27年に「文学界」に発表した「無邪気な人々」という小説を映画化したものだが、小説では世田谷の下高井戸あたりが舞台になっているのを映画化に際してこのお化け煙突が見える下町へと場所を変えている。 
 そしてこのことが映画が成功する要因のひとつになり、お化け煙突の名を全国に広く知らしめるきっかけにもなっている。 
 映画はこのお化け煙突を上空から捉えた印象的なショットから始まっていく。 
 そしてそこに住む上原謙と田中絹代演ずるサラリーマン夫婦を中心とした下町の人々の哀歓が切々と語られていくのである。 
 いまは失われてしまった昭和2,30年代の東京の風景をスクリーンのなかに探し求めた川本三郎の好著「銀幕の東京」のなかにこの映画の内容について書かれたくだりが登場するので、その一部を書き出してみる。 
  
 「『煙突の見える場所』は冬に撮影されている。そのために全体に風景が寒々としている。吐く息は白いし、放水路の水も冷たそうだ。高峰秀子は、仕事を終えて部屋に戻ってくると電熱器で炭をおこし、それを火鉢に入れる。靴下を足袋にはきかえて靴下の修繕をする。まだ暖房がいきとどいていない。みんなが暖かさを求めている。上原謙の勤め先が足袋の問屋という設定も高峰秀子が街頭アナウンスで「そのあたたかさ、そのはき具合、その丈夫さ、必ずみなさまのお心まで暖かくなるやっこ足袋をお召し下さいませ。」と宣伝しているのも、足袋が暖かさの象徴になっているからである。そして、下町の市井の人々が求めている暖かさのすべての象徴として、お化け煙突という火力発電所の煙突がある。まだテレビもマイカーも石油ストーブさえもない昭和28年の冬である。」 
  
 電熱器、炭、火鉢、足袋、といった懐かしい道具が欠かすことのできない生活必需品として使われていることがわかる。そして貧しいながらも毎日を精いっぱいに生きている様子が伝わってくる。 
 こうした当たり前の人たちの当たり前の日常が優しい視線で描かれているのである。 
  
 お化け煙突は昭和39年、東京オリンピックのあった年に老巧化を理由に取り壊されている。 
 そしてこの年を境にして東京の街は大きく変貌していくことになるのである。 
   

 
監督 五所平之助 原作 椎名麟三 脚本 小国英雄 撮影 川崎新太郎 
出演 上原謙/田中絹代/芥川比呂志/高峰秀子/田中春男
 
 
 
 
 
 
1/2 現代人
(52松竹大船)
 
  

 
製作 山本武 監督 渋谷実 脚本 猪俣勝人
撮影 長岡博之 音楽 奥村一/吉沢博
出演 池部良/山村聰/山田五十鈴/小林トシ子
望月優子/伊達信/多々良純/安部徹
  
 
 
 
 
 
1/2 本日休診
(52松竹大船)
 
  
 


  
監督 渋谷実 原作 井伏鱒二 脚本 斎藤良輔 撮影 長岡博之
出演 柳永二郎/三國連太郎/淡島千景/鶴田浩二
長岡輝子/岸恵子/佐田啓二/多々良純
 
 
 
 
 
 
1/2 もず
(61文芸プロにんじんくらぶ)
 
  
  
 
製作 若槻繁 製作・監督 渋谷実
原作・脚本 水木洋子 撮影 長岡博之 
出演 淡島千景/有馬稲子/永井智雄
山田五十鈴/乙羽信子/清川虹子
  
 
 
  
 
 
1/3 ボクサー 
(97アメリカ)
 
 
  
 「マイ・レフトフット」「父の祈りに」に続くジム・シェリダンとダニエエル・デイ・ルイスのコンビによる作品。 ダニエル・デイ・ルイスがシェイプアップした身体で14年間を刑務所で過ごしてきた孤独なボクサー、ダニーを好演している。 
 彼は19才の時にIRAの活動に身を投じて刑務所に送られ、服役中にIRAの活動から身を引いてしまった男である。 
 そんな彼が出所後も故郷のベルファストでボクシングを再開しようと帰ってくる。 
 彼を脱落者と見ている故郷の人たちはそれを快く思わずに、冷たい視線を投げかけるだけである。 
 しかし彼にはどうしても帰らなければならないもうひとつの大きな理由があったのだ。 
 それは昔の恋人マギー(エミリー・ワトソン)への変わらぬ愛のためである。 
 だが、マギーはダニーの服役中に彼の親友と結婚をしており、その彼も今は服役中の身である。 
 そんな夫を彼女は幼い息子とふたりで待っている。 
 さらにマギーの父はIRAの幹部という立場にあり、服役中の夫を待つ妻は貞淑であらねばならぬとする掟を守るための厳しい目を妻たちに注いでいる。 
 こうした状況のなかでダニーはマギーと秘かに再会し、変わらぬ愛を告白するが、マギーは頑なに身を閉ざすばかりであった。 
 昔のコーチを探し出し、ジムを再建したダニーは子供たちを集めてはボクシングを教え始める。 
 それはカソリックの子供もプロテスタントの子供も差別なく教えるといった宗教の壁を越えたものであった。 
 そんな子供たちのなかにはマギーの幼い息子リアムもおり、それだけが今やダニーとマギーを結ぶ唯一の接点となっていた。 
 お互い言葉を交わすこともなく、離れた場所から見つめ合うふたりの表情が言葉以上の思いを語って、切ないほどの情感が伝わってくる。 
 さらにダニーはこうした活動と同時に自らもリングに立つことになる。 
 それは刑務所内で思い描いていた彼の夢の実現であり、失われた14年間を取り戻そうとするかのような闘いでもあった。 
 またそれは自らの青春を奪ったアイルランドの不幸な戦いと対立にたいする彼なりの挑戦でもあったのだ。 
 こうしてダニーの思いを体現したような不屈の闘いがリングの上で繰り広げられることになる。 
 この映画の撮影当時、ダニエル・デイ・ルイスは40才という年齢にもかかわらず、専属のトレーナーについて3年間みっちりとトレーニングを積んで撮影に臨んだそうである。 
 その努力の成果がボクシング・シーンに見事に表れている。 
 フット・ワークや繰り出すパンチが本物のボクサーのようなキレを見せる。 
 孤独な戦士の気概が迫力ある感触で迫ってくる。 
 そしてそれこそが彼に残された生きるための唯一の存在証明であるといった切実さも同時に伝わってくる。 
 だがそんな彼も混乱のベルファストのなかにあっては紛争と無縁ではいられない。 
 せっかく実現させた宗教の対立を越えたボクシング大会がIRA内部の過激派による爆弾テロによって無惨な結果に終わってしまう。 
 さらにダニーは彼の行動を苦々しい思いで見ていたIRAの人間たちに拉致され命の危険にされされることになり、それを救おうとするマギー、さらには組織内の内部抗争がそこに複雑にからんで先の見えない展開がスリリングに繰り広げられていくことになっていく。 
  
 どこまでもアイルランドにこだわり続けるジム・シェリダンの見事な力作である。 
 またベルファストからけっして逃げ出そうとはしないダニーの姿に重ね合わせることで、よりいっそうアイルランドにこだわり続けようとするジム・シェリダンの決意のほどが読みとれる作品でもある。 
  

 
製作・監督・脚本 ジム・シェリダン 製作 アーサー・ラビン
脚本 テリー・ジョージ 撮影 クリス・メンジース
 音楽 ギャビン・フライデー/モーリス・シーザー
出演 ダニエル・デイ・ルイス/エミリー・ワトソン/ブライアン・コックス
ダミアン・デニー/シアラン・フィッツジェラルド/ケネス・クランハム
 
 
 
 
 
 
1/3 真夜中のサバナ
(97アメリカ)
 
 
  
 
製作総指揮 アニータ・ズーカマン
製作 アーノルド・シュティーフェル 製作・監督 クリント・イーストウッド
原作 ジョン・ベレント 脚本 ジョン・リー・ハンコック 撮影 ジャック・ン・グリーン
音楽 レニー・ニーハウス 美術 ヘンリー・バムステッド
出演 ジョン・キューザック/ケビン・スペイシー/ジャック・トンプソン
ジュード・ロー/アリソン・イーストウッド/ザ・レディ・シャブリ
 
 
 
 
 
 
1/3 ブレイブ
(97アメリカ)
 
  
  
 
監督・脚本 ジョニー・デップ 脚本 ポール・マクカドン/D・P・デップ
撮影 ヴィルコ・フィラチ 音楽 イギー・ポップ
出演 ジョニー・デップ/マーロン・ブランド/エルピディア・カリロ
マーシャル・ベル/フレデリック・フォレスト
 
 
 
 
 
 
1/6 憎いあんちくしょう
(62日活)
 
 
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1/7 零戦黒雲一家
(62日活)
 
  
  
 
督・脚本 舛田利雄 原作 萓沼洋 脚本 星川清司
撮影 山崎義弘 音楽 佐藤勝
出演 石原裕次郎/二谷英明/大坂志郎
渡辺美佐子/浜田光夫/草薙幸二郎
 
 
 
 
 
 
1/8 Lie lie Lie
(97日本)
 
  
  
 
製作 笹岡幸三郎 監督 中原俊 原作 中島らも
脚本 伊丹あき 撮影 藤澤順一 音楽 吉俣良
出演 豊川悦司/佐藤浩市/鈴木保奈美/中村梅雀/河合みわこ/麿赤児
 
 
 
 
 
 
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