2001年7月NO.3
 
 
The Ninth Gate
7/19 ナインスゲート

 
●監督・製作・脚本:ロマン・ポランスキー ●原作:アルトゥーロ・ペレス・レベルテ  
●脚本:アンリック・ユルズビー/ジョン・ブラウンジョン 
●製作総指揮:ウォルフガング・グラッテス、マイケル・チェイコ  
●撮影:ダリウス・コンディ ●美術:ディーン・タヴラリス 
●衣装:アンソニー・パウエル ●音楽:ヴォイチェック・・キラール 
●出演:ジョニー・デップ/フランク・ランジェラ/エマニュエル・セイナー  
 レナ・オリン/バーバラ・ジェフォード/ジャック・テイラー  
1999年スペイン/フランス作品 

 

 
BESIEGED
7/20 シャンドライの恋

 
●監督・脚本:ベルナルド・ベルトルッチ ●原作:ジェームズ・ラスタン 
●脚本:クレア・ペプロー ●製作:マッシモ・コルテジ  
●撮影:ファビオ・チャンケッティ ●音楽:アレッシオ・ヴラド 
●出演:デヴィッド・シューリス/タンディ・ニュートン/シリル・ヌリ  
     
1998年イタリア作品 

 「無償の愛」「秘めたる愛」を美しく官能的に描いたベルナルド・ベルトルッチの作品。 
 同時に彼の異境の地への愛と憧れがここにも色濃く投影されている。 
 主人公シャンドライは政治弾圧で逮捕された夫をもつアフリカ人女性、今はイタリアのローマに住んでメイドをしながら医学を学んでいる。 
 そして彼女がメイドとして働く屋敷の主人キンスキーは叔母から相続した屋敷にひとりで住み、ピアノを教えながら作曲をする芸術家である。 
 そんなふたりの愛の顛末がキンスキーの弾く美しいピアノのメロディーにのって描かれる。 
 シャンドライは暗い過去を背負ったアフリカ人女性、そしてキンスキーは親しい友人もいない無口な芸術家、そんな孤独なふたりは同じ屋敷に住みながらもほとんど言葉を交わすこともない。 
 だが静寂はときに言葉以上に饒舌だ。 
 ふたりの部屋の間を行き来する荷物用エレベーターが運んでくるいくつかの品物がキンスキーの秘めた心を代弁する。 
 疑問符が書かれた五線紙、赤い蘭の花、叔母の遺品の指輪、それらがキンスキーの心の動きを強く訴えかけてくる。 
 それに戸惑い反撥をおぼえたシャンドライは指輪を返そうとキンスキーの部屋を訪ねる。 
 するとキンスキーは唐突に彼女に愛の告白を始めてしまう。 
 無口で不器用なキンスキーらしい愛の告白、「君を愛している。結婚して欲しい。」と。 
 さらに「君のためなら、何でもする。」と言う彼にシャンドライは「夫を刑務所から出して!」と応える。 
 この時はじめて彼はシャンドライが結婚していることを知るのである。 
 こうして愛は終わり、再び屋敷に静寂が戻るが・・・・・・。 
 だがキンスキーのほんとうの愛の物語はここから始まることになるのだ。 
 屋敷の家具が、絵画が、調度品が時間とともに次第になくなっていく不思議、そしてそれがキンスキーなりの隠れた愛情表現だと知ることになる。 
 それに気づいたシャンドライの揺れる心、そしてその気持ちをさらに掻き立てるように鳴り響くピアノの音、まるでそのメロディーがシャンドライの心と体を優しく愛撫するかのように聞こえてくる。 
 果てしなく離れていたふたりの距離が次第に近づき、また離れる。 
 そんなふたりの微妙な関係を陰影を帯びた屋敷の螺旋階段が鮮やかに象徴している。 
 そしてついにはキンスキーの命ともいえるピアノまでが屋敷から消えることになる。 
 そして訪れた愛の結末。 
 表現的には「ラストタンゴ・イン・パリ」と対極にある純な大人の愛だが、そこに流れる官能的な詩情は共通のものといえよう。 
 唐突な幕切れが強い余韻を残す。 
 そしてそれによってこの愛の物語が残像として強く刻みつけられることになる。 
2001/08/08 

 
ROSETTA
7/21 ロゼッタ

 
●監督・脚本・製作:リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ  
●編集:マリー=エレーヌ・ドゾ ●製作:ミシェール&ローラン・ペタン  
●撮影:アラン・マルクーン ●美術:イゴール・ガブリエル 
●出演:エミリー・デュケンヌ/ファブリツィオ・ロンギオーヌ  
 アンヌ・イェルノー/オリヴィエ・グルメ    
1999年仏/ベルギー作品 

 1999年カンヌ映画祭でパルムドールと主演女優賞を獲得した作品。 
 監督はジャン=ピエール&リュック・ダルダンという兄弟監督で、この作品以前には「イゴールの約束」という作品があり、こちらも比較的評価の高い映画のようだ。 
 だが、残念ながら未見。 
 その映画も全編手持ちカメラによるドキュメンタリータッチの映画ということで、基本的にはそれがこの兄弟監督の文体のようである。 
 この映画でもカメラはロゼッタの至近距離からほとんど離れることなく終始彼女の行動を追い続けていく。 
 ロゼッタは15歳、ベルギー郊外のキャンプ場のトレーラーハウスに母親とふたりで住んでいる。 
 だが母親は強度のアルコール中毒のためにまったく生活力がなく、ロゼッタひとりが働いて生活を支えている。 
 ところがある日、勤めていた工場を突然解雇されたことから彼女の新たな試練が始まることになる。 
 生活保護を受けることは彼女のプライドが許さず、必死になって職探しを始める。 
 まさに孤軍奮闘、たったひとりの闘いの日々の始まりである。 
 そんな職探しの一部始終をあたかも現実の出来事のようにカメラは記録していく。 
 アル中の母親の面倒を見、食うために古着を売り、手作りの仕掛けを作っては池でマスを獲り、職を得るために当てもなく町をさまよい歩く。 
 こんな過酷な状況にあってもロゼッタは泣き顔も見せず、ただひたすら前を見つめて歩き続ける。 
 その健気さにいつしか見ているこちら側も自然と彼女に同化していくことになる。 
 そして生きるための彼女の職探しがいかに切実なものかがダイレクトに伝わってくる。 
 だから彼女のとった最終手段が褒められたものではないにしても、けっして非難できる種類のものではないという気にさせられてしまうのだ。 
 「そこまでやるか」という気持ちの一方で、「さもありなん」という気持ちも湧いてくる。 
 それが15歳の彼女のとった悲しい選択なのだと納得させられてしまうのだ。 
 だがそんな彼女の張りつめた気持ちも母親のどうしようもない行動によって一気に絶望の淵へと追いやられてしまうことになる。 
 そこまでが15歳のロゼッタの限界だったということだ。 
 ラストでロゼッタがひとりプロパンガスのボンベを運ぶシーンが痛々しい。 
 よろめき、何度も重いボンベを落としてしまうのは彼女のこれまでの道程をあたかも象徴しているかのようである。 
 そして全編を覆うベルギーの重苦しい曇り空がよりいっそうこちらの心を暗くする。 
 だがその暗い気持ちが倒れたロゼッタに手を差しのべるリケの姿によって一瞬のうちに希望へと転換するのである。 
 見事な幕切れだ。 
2001/07/24 

 
 
7/22 十五才─学校IV

 
●監督・脚本:山田洋次 ●脚本:朝間義隆/平松恵美子 
●プロデューサー:中川滋弘/深澤宏  
●撮影:長沼六男 ●音楽:冨田勲 ●美術:出川三男  
●出演:金井勇太/麻実れい/赤井英和/小林稔侍/秋野暢子   
 前田吟/中村梅雀/余貴美子/高田聖子/大沢龍太郎/丹波哲郎   
  
2000年松竹作品 

 

 
THE TALENTED MR.RIPLEY
7/23 リプリー

 
●監督・脚本:アンソニー・ミンゲラ ●原作:パトリシア・ハイスミス 
●製作総指揮:シドニー・ポラック ●プロダクション・デザイナー:ロイ・ウォーカー  
●製作:ウィリアム・ホルバーグ/トム・スターンバーグ  
●撮影:ジョン・シール ●音楽:ガブリアエル・ヤレド 
●出演:マット・デイモン/グウィネス・パルトロウ/ジュード・ロウ  
 ケイト・ブランシェット/フィリップ・シーモア・ホフマン /ジャック・ダベンポート     
1999年アメリカ作品 

 

 
  
 
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