2000年8月 NO.2
  
 
 THE PERFECT STORM
8/7 パーフェクト・ストーム

 
●監督・製作:ウォルフガング・ペーターゼン 
●製作総指揮:ダンカン・ヘンダーソン/バリー・レビンソン 
●製作:ゲイル・カッツ/ポール・ウェインスタイン  
●脚本:ウィリアム・D・ウィトリフ/ボー・ゴールドマン 
●撮影:ジョン・シール ●音楽:ジェームズ・ホーナー  
●出演:ジョージ・クルーニー/マーク・ウォールバーグ/ダイアン・レイン  
 カレン・アレン/ウィリアム・フィッチナー/ボブ・ガントン/ジョン・C・ライリー 
  
2000年アメリカ作品 

 前半の人物紹介や状況説明がいかにも通りいっぺんで、もたつきを感じさせるが、漁船がいったん航海に出ると、やはり「Uボート」や「エアフォース・ワン」など狭い空間に閉じこめられた人間たちを描くことが得意なウォルフガング・ペーターゼンらしく俄然その腕の冴えを発揮する。 
 思うように獲物が挙がらない苛立ちや、それが原因の仲間同士のぶつかり合い、さらには気の弛みから起きる事故といったふうに、つぎつぎと起きるエピソードを手際よく見せていく。 
 まるでいっしょに漁船に乗り込んでいるような気分にさせてくれる。 
 こうして最大の見せ場である史上最大の嵐「パーフェクト・ストーム」との遭遇場面へと突入していくことになる。 
 そしてここまでの物語が実はこの大ハリケーンの映像を見せるためだけにあったのだと謂わんばかりの大迫力で嵐を見せてくれるのだ。 
 息を呑む凄まじさである。まさに大画面、大音響の映画館のスクリーンでこそ見るべき映画である。 
 ここまで見せられるともうこれまでの物語の細部や人間関係などはどうでもよくなってしまうのだ。 
 とにかくこういった種類の映画はこうした大迫力を体験するだけで満足すべき映画なのだということをあらためて思ったような次第である。

 
 
 
8/8 ねじ式

 
●監督・脚本・製作:石井輝男 ●原作:つげ義春 ●製作:小林桂子 
●撮影:角井孝博 ●美術:松浦孝行 
●編集:神谷信武 ●音楽:瀬川憲一  
●出演:浅野忠信/藤谷美紀/藤森夕子/金山一彦/丹波哲郎/清川虹子  
 つぐみ/藤田むつみ/青葉みか/水木薫/砂塚秀夫  
  
1998年日本作品 

 93年に石井輝男が撮った「ゲンセンカン主人」の続編ともいうべきつげ義春原作の劇画の映画化。 
 今回は「別離」「もっきり屋の少女」「やなぎや主人」そして「ねじ式」という作品のオムニバス。 
 しかしそれがきっちりと1本の映画としてつながっていて、オムニバスという感じがしないのはやはり「ゲンセンカン主人」の場合と同様である。 
 これはやはりどこをとってもつげ義春という強烈な個性が放射しているせいで、たとえてみれば「ねじ式」に出てくる金太郎飴のようなものということになるのだろう。 
 「別離」で挫折したまんが家が例によって当てもない旅に出て、まず最初に「もっきり屋の少女」と出会い、つぎは房総に行って「やなぎや」に泊まり、そこの女主人と情交し、さらに海で「メメくらげ」に刺されたことから「ねじ式」の世界へと入っていく。 
 こうやって物語の進行とともに次第に妄想がふくらみ始め、現実感を喪失し、幻想的な世界へと迷い込んでいく。 
 石井輝男のもつ毒々しさ、心地よい俗悪さがつげ作品のもつ幻想性や侘びしいユーモアの世界とみごとに溶け合い、いわく言い難い世界を形作っている。 
 この世界にいつまでも浸っていたいという気持ちにさせられる。

 
 
 THE RED VIOLIN
8/9 レッド・バイオリン

 
●監督・脚本:フランソワ・ジラール ●脚本:ドン・マッケラー 
●製作:ニブ・フィッチマン ●撮影:アラン・ドスティ ●美術:フランソワ・セガン  
●音楽:ジョン・コリリアーノ バイオリン演奏:ジョシュア・ベル  
●衣装デザイナー:レニー・エイプリル 
●出演:カルロ・セッチ/イレーネ・グラツィオーリ/クリストフ・コンツェ  
 ジェイソン・フレミング/グレタ・スカッキ/シルヴィア・チャン 
 サミュエル・L・ジャクソン  
1998年カナダ/イタリア作品 

 「レッド・バイオリン」と呼ばれる伝説の楽器が数奇な運命によって人から人へと伝わっていくなかで、それを手にした者がつぎつぎと破滅の道へと突き進んでいく様子がオムニバス風に描れる。 
 イタリア、オーストリア、イギリス、中国、カナダと5つの国を舞台に、さらに400年の時を刻んでスケール大きく描かれる。 
 呪われた楽器をめぐるそれぞれのエピソードはそれだけでも1本の映画として成立しそうな内容で、十分に堪能できる。 
 とくに音楽と美術には目を奪われる。 
 だがそれを締めくくる役割を担ったカナダでのオークション場面の決着のつけかたがいささか弱く、全体の印象をぼやけたものにしてしまっているのはいささか残念だ。 

 
 
 π
8/9 π(パイ)

 
●監督・脚本:ダーレン・アロノフスキー ●製作:エリック・ワトソン 
●編集:オレン・サーチ ●美術:マシュー・マラッフィー 
●撮影:マシュー・リバティック ●音楽:クリント・マンセル  
●出演:ショーン・ガレット/マーク・マーゴリス/スティーブン・パールマン  
 ベン・シェンクマン/サミア・ショアイブ/アジャイ・ナイデゥ  
  
1997年アメリカ作品 

 この世のすべてのものは、数字によって解明できると信じる天才数学者が主人公のこの映画はまさに彼の病んだ妄想そのものといえよう。 
 粒子の荒い白黒の映像が彼の見る悪夢そのものを表しているようで、出口のない果てしない旅にわれわれ観客を誘い込んでいく。 
 彼の作りだしたスーパーコンピューター「ユークリッド」がはじき出す意味不明の数字の数々、ヘブライ語のアルファベットは、すべて数字に直訳できると話すユダヤ教カバラ主義者の神秘的な話、さらには主人公マックスの唯一の話し相手で囲碁を打ち合う相手でもある老数学教授ソルの話す哲学的な話題、(アルキメデスの「ユリイカ」の話やギリシャ神話のイカロスの話、そして囲碁のなかに世界の仕組みを見いだそうとする話)などが味つけされることでますます謎めいた雰囲気を醸し出す。 
 さらには主人公マックスが住むチャイナタウンのエスニックな雰囲気がそれをさらに複雑に盛り上げていく。 
 ある日彼のコンピューターが216桁の数字をはじき出す。 
 果たしてそれが彼の求めるこの世の真理を解く鍵なのか? 
 そしてこの妄想の果てには何が待ち構えているのだろうか? 
 主人公マックス同様、われわれ観客も次第に迷路へと迷い込み、神経症的な頭痛に悩まされることになっていく。 
 意欲作であることは認めるが、あまり好きにはなれない作品である。

 
 
 
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