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2007年日本作品。 上映時間102分。 監督/脚本: 小林政広 製作: 小林直子 撮影監督: 西久保弘一 編集: 金子尚樹 出演: 小林政広/ 渡辺真起子 |
低予算ながら、2007年のロカルノ映画祭でグランプリを受賞した作品である。 監督は小林政広、そして彼自身がこの映画の主役も演じている。 相手役は渡辺真起子、彼女も低予算映画や芸術色の濃い映画によく出演する女優である。 登場人物はこのふたりだけ。 14歳の少女がネットのトラブルから同級生の少女を殺してしまう。 その被害者の父親と加害者の母親の話である。 映画の冒頭、事件についてのそれぞれのインタビューが映し出される。 そして一年後の北海道、そこでふたりは偶然出会う。 男は製鉄所の労働者として、そして女は製鉄所の社員食堂で働く賄い婦として。 どうしてふたりが出会うことになったのか、そうした経緯や説明はいっさい省かれている。 ただ、どちらも世間から身を隠すように生きており、その彩りのない寂しい生活の様子が淡々と描かれるだけ。 男は溶鉱炉の溶けた鉄を扱い、仕事の後は入浴、そして社員食堂で食事をする。 女は食事の用意、そして運ばれてくる食器のあと片付け、その後の立ったままでの貧しい食事。 そうした様子が何度も何度もくりかえし反復されていく。 冒頭のインタビュー以後の1時間を越える描写の間、ふたりは無言のままで、セリフはいっさいない。 ごくありふれた日常生活の風景が延々とくりかえされるのみ。 ただ殺人事件の加害者と被害者のそれぞれの親という設定が、そのありふれた風景を緊張感の孕んだものにしている。 そしてそうした反復が、まるでふたりに科せられた「行」のようにも思えてくる。 さらに目を凝らして見ているうちに、同じ反復のように見えていたものが、少しづつ変化していっていることに気がつく。 何かが確実に変わり始めている。 果たしてこの後ふたりはどうなっていくのか、そうした思いが次第に高まっていくが、それに対する答えは描かれることはない。 というよりも、そうした安易な結末、カタルシスはハナから拒否しているのである。 観客を焦らせておいて、その期待をはぐらかす、まさに確信犯的な映画といえるだろう。 何も起こらない、何も示さない、だがそこには確実に哀しみを抱えながら生きていく人間のリアルな姿が刻み付けられている。 そしてどんな状態に置かれようとも、人は人を求めようとする。 タイトルバックで流れる監督自身によるギターの弾き語りが、緊張の後の心地よい脱力感を与えてくれた。 <2010/5/30> |
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