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●監督:スティーヴン・ダルドリー ●脚本:リー・ホール
●製作:グレッグ・ブレンマン/ジョン・フィン ●撮影:ブライアン・トゥファーノ ●美術:マリア・ジュルコヴィック ●振り付け:ピーター・ダーリング ●編集:ジョン・ウィルソン ●音楽:フティーブン・ウォーベック ●出演:ジェイミー・ベル/ジュリー・ウォルターズ/ゲアリー・ルイス ジェイミー・ドラヴェン/ジーン・ヘイウッド/アダム・クーパー 2000年イギリス作品
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とにかく仕方がないほど泣けてしまった。
炭坑町の貧しい少年がふとしたことからバレエと出会い、ロイヤル・バレエ学校の入学を目指すといったシンプルな映画がこんなにも素敵で感動的なのはここに親子の愛情や対立、希望や挫折、友情、そして出会いや別れといった人生のさまざまな要素が見事に描かれているからだ。 人は好きなものに出会うことで成長への階段を登り始める。 そしてそこで人と出会うことでそれはさらに促されることになる。 主人公の少年ビリーにとってそれはバレエであった。 そしてそこでバレエ教師のウィルキンソン先生と出会ったことがさらに大きな出会いだった。 好奇心半分で始めたビリーのバレエも初めはぎこちなかったものの日を重ねるにしたがって次第に上達、ウィルキンソン先生は彼のなかに優れた才能のあることに気づき始める。 そしてその才能をさらに伸ばそうとビリーにロイヤル・バレエ学校入学のためのオーディションを受けることを提案する。 だが男がバレエを習うなどとんでもないと考える父親によって反対され、その夢は脆くも崩れ去ろうとする。 そんなストーリーが1984年のイングランド北東部の炭坑町ダーラムで繰り広げられるのだが、これは同じく不況の鉱山を背景にした「フルモンティ」や「ブラス」といった映画と同じ系譜に属する物語なのである。 そしてそれらに負けない感動作でもある。 1983年、サッチャー政権が発足。それを契機に全国で大規模な合理化の嵐が吹き荒れた。 この政策がイギリス社会に与えた影響は大きく、そのためこの時代を背景に映画がしばしば作られることになる。 これもそんな映画のひとつだが、その時代背景がここでも重要なファクターになっている。 炭坑町で生まれた男たちにとって炭坑夫となって生きることはごくあたりまえの事実である。 それが自分たちに与えられた運命であり、そうした運命を受け入れて町で静かに一生を終えることがいちばん幸せなことなのだと心の底から考えている。 ビリーの父や兄もそうした考えから何の疑いもなく炭坑夫になった男たちである。 そしてそのことに彼らなりに強いプライドと自負を持っている。 当然ビリーもそんな大人の一員になっていくにちがいないのだ。 だがそんな考え方も急激に押し寄せる時代の波によって大きく揺らぎ始めた。 不況から炭坑会社は閉山を決定、組合はそれに異を唱えてストに突入、ビリーの父や兄もストの先頭に立って激しく闘っている。 当然それによって彼らは収入の道を閉ざされている。 だがそんな貧しい環境にあっても父親はビリーを男らしく育てようとボクシングを習わせるが、ビリーにとってはボクシングよりも同じ体育館で教えているバレエのほうに興味をおぼえてしまう。 こうした経緯の伏線として亡くなった母親がフレッド・アステアの熱烈なファンだったということや、さらには彼女が音楽好きで遺品として古いピアノが残されており、ときどきビリーが母親のことを思い出しながらピアノをつま弾くといったエピソードがさりげなく挿入されている。 また同居する祖母も昔はプロのダンサーを目指していたといった話が祖母自身の口から語られるが、これについては祖母が半分痴呆気味なので、真偽のほどは分からない。 だがとにかく少なくともビリーのまわりにもこうした芸術に親しむ機会がわずかではあっても存在していたということが描かれているのだ。 そんな母親の血を受け継いだビリーは急速にダンスの魅力にとりつかれていく。 そしてビリーの生活は次第にバレエ一色のものになっていく。 もっとバレエについて知りたいと考えたビリーは移動図書館からバレエの本を万引きし(これはケン・ローチ監督の「ケス」からの引用か?)それを参考にしながら自宅で隠れて猛レッスンを繰り返す。 こうしてビリーのダンスはめきめきと上達していく。 その上達のプロセスをピルエット(回転)ができるようになるまでの映像として描いているが、見ていてとても楽しい。 伸び盛りの少年が素直に成長していく姿は清々しい。 思わず共感をおぼえてしまう。 そんなところも映画の見どころのひとつだ。 ビリーはダンスが上達するにつれて歓びや哀しみといった感情をダンスによって表現するようになっていく。 それがビリーの際だった才能のひとつでもあるということだ。 どこにも行き場のない感情、言葉では表現できない感情をダイレクトにダンスの形にして表現する。 激しくステップを踏み、ジャンプをし、その躍動する姿が素晴らしい。 そして圧巻は反対する父親の前で思いの丈をこめて踊り続けるシーンである。 ロイヤル・バレエ学校のオーディションを諦め、バレエのレッスンに行くのも禁じられたビリーがクリスマスの夜、体育館で親友といっしょにダンスを踊っているところを父親に見つかってしまう。 禁じたはずのバレエを踊るビリーに激怒する父。 だが進退窮まったビリーがとった行動はわれわれの意表をつくものだ。 怒る父親の制止を無視するかのように彼は突然踊り始める。 それは威圧する父親に対する無言の抵抗のようでもあり、ダンスを禁じられたことへの抗議のようにも見える。 さらにそれは「僕はこんなにもダンスが好きなのだ」というビリーの心の底からの叫びのようにも見える。 とにかくありとあらゆる思いをこめてビリーは踊り続ける。 そしてこのビリーのダンスが父親の気持ち大きく変えることになる。 黙ってビリーのダンスを見ていた父親は突然体育館を飛び出していく。 そしてその足でウィルキンソン先生の家を訪ねると、ビリーにオーディションを受けさせることを承諾するのである。 ビリーが力の限りに踊る姿を見ることでビリーがどんなにバレエが好きか、そしてそれがビリーにとっていかに大きな存在なのかを悟ったのである。 こうしてビリーのオーディションへの挑戦が再び開始されるが、この後の父親のとった行動は涙なくしては見られない。 自らの信念を曲げてまでビリーのために金を稼ごうとするのだが、とにかくここからラストまでは涙、涙、涙の連続なのである。 そしてラストではわれわれ観客をこれ以上ないほど幸せな気分にしてくれる。 ほんとうに何度でもくり返し観たくなる映画である。 2001/08/04
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●監督:グレゴリー・ホブリット
●脚本・製作:トビー・エメリッヒ ●製作:ホーク・コッチ/ビル・カラッロ ●撮影:アラー・キヴィロ ●音楽:マイケル・ケイメン ●出演:デニス・クエイド/ジム・カヴィーゼル/ショーン・ドイル エリザベス・ミッチェル/アンドレ・ブラウアー/ノア・エメリッヒ 2000年アメリカ作品
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