2000年12月 NO.1
  
 
 THE STRAIGHT STORY
12/2 ストレイト・ストーリー

 
●監督:デヴィッド・リンチ ●脚本:ジョン・ローチ/メアリー・スウィーニー  
●製作:アラン・サルド/メアリー・スウィーニー/ニール・エデルスタイン   
●撮影:フレディ・フランシス ●音楽:アンジェロ・バダラメンティ   
●出演:リチャード・ファーンズワース/シシー・スペイセク/  
 ハリー・ディーン・スタントン/ジェームズ・カダー/ウィリー・ハーカー   
   
1999年アメリカ作品 

 アメリカ中西部の町アイオワ州ローレンスからウィスコンシン州マウント・ザイオンまで560kmの距離を時速8kmのスピードしか出ないトラクターに乗って旅する老人の物語。 
 このいかにも浮き世離れした物語を鬼才デビッド・リンチがこれまでのスタイルを一変させた穏やかな語り口で撮っている。 
 日常の奥に潜む狂気と暴力の世界を変態的とも思えるようなタッチで描き続けてきたリンチがこんなにも穏やかで静かな映画を作るとは思いがけないことである。 
 これがリンチの作品だと言われなければそうとは判らないだろう。 
 私自身は別段リンチ・フリークというわけではなく、むしろこれまでのリンチ作品よりもこの作品の方により親しみを感じるほうの人間なのだが、いわゆるリンチ・ファンにとってはいささか戸惑いがあるかもしれない。 
 だがそれでいて、時々リンチらしい狂気や暴力の影が垣間見えるのも事実だ。 
 例えば主人公のアルヴィン・ストレイトにはかつて戦場で誤って味方の兵士を撃ってしまったという過去があり、その傷を心の奥深くに隠し持っている。 
 旅の途中、とある酒場のカウンターで隣合って座った老人が偶然にも戦争で心に傷を負った自分と似た体験をもった人物だということが分かると、ふたりで淡々とその体験を話し始める。 
 それはリンチがこれまで描いてきたダイレクトな狂気や悪夢とは違う枯れて渇いた悪夢だが、それだけに却って深く心に沁みこんでくる。 
 またアルヴィンの娘(シシー・スペイセクが好演)は結婚生活に破れ、それがもとで心を病み、人とのコミニュケーションがうまくいかない。 
 そんな傷ついた過去を、ときおり見せる悲しげな表情や失語症気味の会話でそれとなくなく匂わせている。 
 だがそういったものは日常深くに沈み込んでいるだけで映画はあくまでも「ストレイト」な「ストーリー」なのである。(主人公の老人のストレイトという名前と「まっすぐな」という意味の両方の意味をもたせているのにちがいない。) 
 長年、仲違いしたままの兄に会い、そして和解をするというそのことだけのために老人はトラクターに乗って旅をする。 
 それは腰を痛めた老人がひとりで旅をするために考えだした苦肉の方法なのだが、それだけではなく兄と和解をするためにはそうやって時間をかけて旅をしなければならないのだと自分に言い聞かせているかのようにも見えてくる。 
 簡単に旅行をし、兄に会うのは自分の気持ちが許さない。 
 安易な方法で会うべきではない。自分に試練を課すことこそが兄との再会には必要なのだ。 
 そんな老人の声が聞こえてくるようだ。 
 広大なトウモロコシ畑、延々と続く道、そのなかでさまざまな人と出会い、自然を感じながら旅をする。 
 自動車で走り過ぎるだけではけっして見えてこない風景や出来事がそこにはある。 
 そして出会った人々との交流のなかで彼は自身の人生の断片を静かに語っていく。 
 それは彼の人間にたいする暖かい目と人生にたいするまっすぐな姿を感じさせる言葉だ。 
 その言葉は相手の心を癒し、さらにはわれわれ観客の心を癒していく。 
  
 「年とっていいことは?」 
  
 「目も足も弱っていいことなどないが、経験は積むからな。年とともに実と殻の区別がついてきて細かいことは気にせんようになる。」 

 「それじゃあ、年とって最悪なのは何?」 

 「最悪なのは若いころを覚えていることだ」 
  
 幼さが消えない家出娘に問われて語るアルヴィンのこの言葉が心に残る。 
 そしてアルヴィンを演じるリチャード・ファーンズワースの表情のなんといいことか!! 
 私も家出娘と同じように満天の星の下でたき火を囲みながら心ゆくまで彼と話がしてみたいと思ってしまうのである。 

2002/01/20

 
  
ROMEO MUST DIE
12/3 ロミオ・マスト・ダイ

 
●監督:アンジェイ・バートコウィアク ●製作総指揮:ダン・クラッチオロ  
●製作:ジョエル・シルヴァー/ジム・ヴァン・ウィック/ウォーレン・カー     
●脚本:エリック・バーント/ジョン・ジャレル ●美術:マイケル・ボルトン  
●撮影:グレン・マクファーソン ●音楽:スタンリー・クラーク/ティンバランド   
●出演:ジェット・リー/イザイア・ワシントン/ラッセル・ウォン/デルロイ・リンドー  
 D・B・ウッドサイド/ヘンリー・オー/ジョン・キット・リー/エドアルド・バレリーニ   
 
2000年アメリカ作品 

 リー・リンチェイことジェット・リーの迫力あるカンフーアクションを披露するためだけに作られたような映画である。 
 物語のベースになっているのは「ロミオとジュリエット」だが、ラブ・ストーリーの部分は中途半端。 
 ジェット・リーにはやはりロマンスよりもアクションが似合う。 
 だがアクション部分も期待したほどではなく、中国武術大会4連覇のジェット・リーの技は生かし切れていないという印象だ。 
 ワイヤー・アクションを使った空中6人蹴りなどに冴えはみられるものの、見せ方にもうひと工夫欲しかったところだ。 
 中国マフィアの用心棒を演じているラッセル・ウォンがなかなか存在感のあるところを見せている。 
2001/06/27

 
 
 ED TV
12/7 エドTV

 
●監督・製作:ロン・ハワード ●脚本:ローウェル・ガンツ/ババルー・マンデル  
●製作総指揮:トッド・ハロウェル/マイケル・ロイ/リチャード・サドラー   
●製作:ブライアン・グレイザー 
●撮影:ジョン・シュワルツマン ●音楽:ランディ・エデルマン   
●出演:マシュー・マコノヒー/ウッディ・ハレルソン/ジェンナ・エルフマン  
 エリザベス・ハーレー/デニス・ホッパー/マーチン・ランドー/ロブ・ライナー   
 エレン・デジェネアス/サリー・カークランド/クリント・ハワード  
1999年アメリカ作品 

 低視聴率にあえぐケーブルTV局が起死回生をはかるために考え出した番組。 
 それはたったひとりの人間を24時間追い続けるという企画であった。 
 そして選ばれたのがうだつの上がらない男エドであった。 
 30歳を過ぎても独身で、ビデオレンタル店の店員をやっているエドの変哲もない生活にカメラが入り周囲はいっきに慌ただしいものになっていく。 
 そしてこの番組がなぜか高視聴率を上げ始め、あっというまにスターに祭り上げられていく。 
 加熱する騒動の中、彼はどう反応し、また周辺の人間たちがどう変わっていくかが皮肉をこめた眼差しで描かれていく。 
 現代を生きる者にとって今や不可欠な道具であるTVというものが持つ問題と矛盾を鮮明に浮かび上がらせようとした意欲作。 
 ただその意気込みほどにはいまひとつ切実さが迫ってこなかった。 
2001/06/27

 
 
 WHAT LIES BENEATH
12/18 ホワット・ライズ・ビニース

 
●監督・製作:ロバート・ゼメキス ●脚本・原案:クラーク・グレッグ  
●製作総指揮:ジョーン・ブラッドショー/マーク・ジョンソン   
●製作:スティーヴ・スターキー/ジャック・ラプケ  
●撮影:ドン・バージェス ●音楽:アラン・シルヴェストリ   
●出演:ハリソンフォード/ミシェル・ファイファー/ダイアナ・スカーウィッド  
 ジョー・モートン/ジェームズ・レマー/ミランダ・オットー/アンバー・ヴァレッタ   
   
2000年アメリカ作品 

 

 
 
 
 
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