キネマ旬報邦画ベストテン100作品データ NO.2
 
 
 
ソナチネ
 
 
●監督・脚本:北野武 ●原作:奥山和由  
●撮影:柳島克己●音楽:久石譲  
●出演:ビートたけし/国舞亜矢/渡辺哲 
 勝村政信/寺島進/大杉漣/逗子とんぼ  
   
1993年松竹作品

 北野武の映画の特徴はその暴力描写の衝撃性にある。 
 だからたとえ暴力が直接描かれない場面であったとしても、その衝撃の影を引きずってピリッとした緊張感で貫かれている。 
 「その男、凶暴につき」「3−4x10月」そして本作と続いたバイオレンス映画で北野武監督が心がけたことは手垢のついた演技や演出を極力避けるということだったように思う。 
 いかにもそれらしいといった先入観のあるイメージは北野監督のもっとも嫌うところである。 
 そうした常識や偏見に縛られた表現に出会うと必ず揶揄しようとする芸人根性が頭をもたげてきてしまう。 
 彼のシャイな性格や、下町育ちのセンスがそうしたものを許さない。 
 そんな創作態度で作られる彼の映画は、だからこそ新鮮なイメージや表現に満ちており、時としてその斬新さに驚かされることになる。 
 そしてそれがもっとも顕著に現れるのが、暴力描写ということになるのである。 
 そうした表現がこの映画ではますます洗練されたものになっている。
  
 
 
 
ゆきゆきて、神軍
 
 
●監督・撮影:原一男  
●製作:小林佐智子 ●企画:今村昌平    
●出演:奥崎謙三  
   
1987年疾走プロダクション作品

 この映画の凄さはそのまま奥崎健三という人物の得体の知れない凄さにつながっているといえるだろう。 
 それは暴力や脅しまがいの過激な手段に訴えてでも戦争責任を追求してやまない奥崎健三の異様な執拗さから来るものだ。 
 かつての上官や関係者を訪ね歩き、戦地ニューギニアで起きたさまざまな事件の真相を追求していく様子はなみなみなるぬ迫力に満ちている。 
 これは事実だけがもつ迫力である。 
 われわれ観客はカメラとともにズシリと重い体験をしていくことになる。 
 不謹慎を承知で云えば、こんなおもしろい体験はめったにない。
 
 
 
 
もののけ姫
 
  
●監督・原作・脚本:宮崎駿  
●製作総指揮:徳間康快   
●撮影:奥井敦 ●音楽:久石譲  
●声の出演:松田洋治/石田ゆり子 
 田中裕子/小林薫/西村雅彦/上條恒彦 
 名古屋章/美輪明宏/森繁久彌 
   
1997年東宝作品

 宮崎駿が一貫して描き続けてきた自然と人間との壮大なドラマの集大成ともいうべき作品である。 
 宮崎作品の自然の象徴ともいうべき森とそこに住む神々や動物たちと、それを破壊せざるをえない人間との宿命的な争いが見事な映像によって描かれており、幻想的でスケールの大きい神話的な世界へと導いてくれる。 
 「風の谷のナウシカ」にはじまり、数々の名作アニメを生み出してきた宮崎アニメが総力をあげて作りだしたというだけあってその力強さと奥行きの深さには並々ならぬものがある。 
 ただし感動という点においては同様の作品「風の谷のナウシカ」のほうに軍配が上がる。 
 もちろん技術の高さや映像の素晴らしさにおいてはこちらのほうが数段上ではあるが、感動の高さはやはり「ナウシカ」には敵わない。 
 おそらく映画としてケールアップしたものの、物語の収拾がその壮大さ故に逆につきかねたということなのかもしれない。 
 だからといってこの作品を凡作だといって貶めるつもりはいささかもなく、やはりこれが素晴らしい傑作であることは間違いないわけで、ただファンとしてはどうしてもそれ以上のものを期待してしまうのだ。
 
  
 
 
青い山脈
 
  
●監督・脚本:今井正 ●脚本:井出俊郎  
●撮影:中井朝一 ●音楽:服部良一   
●出演:原節子/池部良/伊豆肇/木暮実千代  
 龍崎一郎/若山セツコ/杉葉子  
   
1949年東宝作品

 古く封建的な考えの残る地方の女学校に赴任してきた新任の女教師が生徒間の争いの仲裁をしたことから町の封建勢力と対決せざるをえなくなり、彼女の新しい考え方に共鳴した教師や生徒たちの協力をえながら古い考えに立ち向かっていくという話である。 
 石坂洋次郎の青春小説を映画化したこの映画は、今観るとたわいのないものにも思えるが、そこに流れる希望にあふれた明るさだけは今でも確実に伝わってくる。 
 バックに流れる有名な主題歌がその気分をさらに大きく後押ししている。 
 おそらくこれをリアルタイムで観た人たちは明るい時代が近づきつつあるとことを強く実感したにちがいない。
 
 
 
 
櫻の園
 
  
●監督:中原俊 
●製作:岡田裕 ●原作:吉田秋生  
●脚本:じんのひろあき ●撮影:藤沢順一 
●出演:中島ひろ子/つみきみほ/白鳥靖代  
 梶原阿貴/三野輪有紀/岡本舞/白石美樹  
   
1990年アルゴプロジェクト作品

 桜の花が咲き誇る私立女子高校の創立記念日。 
 その日にチェーホフの舞台劇「桜の園」が上演されるのがこの学校の恒例の行事である。 
 その開演2時間前から開演までの演劇部員たちの様子を追っていくことで、少女たちの青春の揺れと輝きを捉えようとした作品。 
 少女たちの憧れ、嫉妬、不安、希望、歓び、そうしたさまざまな感情が交錯していく。 
 桜の花が散るように儚く過ぎ去ってしまう少女たちの一瞬の輝きをこの映画は見事にとらえている。 
 中原監督はこのように閉ざされた場所、限定された時間のなかでのドラマを撮ることが得意な監督である。 
 同じように限られた時間空間設定のドラマでは、この作品の後に撮った「12人の優しい日本人」がある。 
 こちらもなかなかの秀作であったことを思い出す。
 
  
 
 
 
 
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