2000年6月 NO.4
  
 
THE LEGEND OF 1900
6/24 海の上のピアニスト

 
●監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ ●原作:アレッサンドロ・バリッコ 
●製作総指揮:フランチェスコ・トルナトーレ ●製作:ローラ・ファットーリ 
●撮影:ラヨシュ・コルタイ ●音楽:エンリオ・モリコーネ 
●出演:ティム・ロス/プルート・テイラー・ヴァンス/メラニー・ティエリー 
  クラレンス・ウィリアムズ三世/ビル・ナン/ピーター・ヴォーン 
  
1999年アメリカ/イタリア作品 

 映画「ニュー・シネマ・パラダイス」のコンビ、ジュゼッペ・トルナトーレとエンリオ・モリコーネが作りだすこのピアニストの物語は映像と音楽が素晴らしい。 
 そしてティム・ロスが素晴らしい指の動きでこの天才ピアニストを見事に演じている。 
 彼の演奏シーンを見ているとまるで彼自身がほんとうに即興で演奏しているかのようだ。 
 それほど彼の演奏ぶりは自然でそれらしく見える。 
 嵐の海で船が大きく揺れるなか、ピアノを演奏しながら床を縦横に滑っていくシーンの幻想的な美しさ。 
 さらにはジャズの創始者ジェリー・ロール・モートンとの息詰まるようなピアノ合戦の迫力と興奮。 
 またレコード録音の最中に窓の外にたたずむ少女の姿に突然恋をしてしまい、その感情を即興でメロディーにして奏でるシーンのあふれるような情感。 
 こういったピアノ演奏の名場面が重ねられることで主人公のピアニスト、1900(ナーンティーン・ハンドレッド)の伝説が自然と生まれていくのである。 
 さらに彼の出生にまつわる謎がこの伝説をさらに複雑なものにしている。 
 豪華客船ヴァージニアン号のピアノの上に捨てられていた赤ん坊、それを見つけた黒人機関士ダニーの手で育てられ、生まれていちども船を降りたことのないピアニスト。 
 戸籍もなく、だから彼はこの世には存在しない人間でもある。 
 そんな彼の伝説的な物語が元バンド仲間のトランペッター、マックスの回想によって綴られていく。 
  
 豪華客船であると同時にアメリカを目指す大勢の移民たちを運ぶ船でもあるヴァージニアン号の船内で展開されるこの物語は時に映画「タイタニック」を連想させられる。 
 そのスケールの大きさはけっして「タイタニック」にも負けてはいない。 
 そして突然現れる新大陸のスケールの大きな光景にも驚かされる。 
 船の向こうにそびえ立つ自由の女神や摩天楼の巨大さがこの世のものとも思われないような輝きをみせている。 
 こうした映像と音楽の見せ場が数多く用意されており、トルナトーレとモリコーネの息もぴったりと合っている。 
 語り手マックスが映画の冒頭でもらす「いい物語があって、それを語る人がいるかぎり、人生、捨てたもんじゃない」という言葉通りの物語が詩情豊かに流れていく。 
 まさにこんな映画を観ていると、人生捨てたもんじゃないという気持ちにさせられるのである。

 
 
THE HURRICANE
6/26 ザ・ハリケーン

 
●監督:ノーマン・ジュイソン ●原作:サム・チェイトン/テリー・スウィントン 
●脚本:アーミアン・バーンズタイン/ダン・ゴードン 
●撮影:ロジャ・ディーキンス ●音楽:クリストファー・ヤング 
●出演:デンゼル・ワシントン/デボラ・カーラ・アンガー/ヴィセラス・レオン・シャノン  
  ダン・ヘダヤ/ロッド・スタイガー/ジョン・ハンナ/リーブ・シュレイバー 
  
2000年アメリカ作品 

 ボブ・ディランが歌う「ハリケーン」のモデル、実在のボクサー、ルービン・“ハリケーン”・カーターの30数年にわたる冤罪との闘いを描いた物語。 
 カーターが獄中で書いた自伝を古本の山のなかから偶然に見つけ出した黒人少年が、それに感動し、それがきっかけで彼との交流が始まっていく。 
 そしてそれがやがて彼の冤罪を晴らす大きな力となっていく。 
 だが、そうした物語以上に主人公のルービン・“ハリケーン”・カーターを演じるデンゼル・ワシントンの存在感が大きく印象に残る映画だ。 
 1年間かけて作り上げたという見事なボクサーの身体で現役時代のカーターの迫力あるファイティング・スピリットを見せてくれる。 
 さらに獄中での苦悩する姿や絶望の中から立ち上がり冤罪を晴らすための最後の闘いへと歩み出す姿を見事に演じ分けていく。 
 時には黒ヒョウのような精悍さをみせ、時には哲学者のような深い思索の影を漂わせながら、数奇な運命に弄ばれる天才ボクサーの長い苦闘の歴史を再現していく。 
 これは彼が過去に演じた実在の人物「マルコムX」と双璧をなす演技といっていいだろう。 
 それを証明するかのように、この演技で彼はオスカー主演賞候補にあがったほか、ゴールデン・グローブ賞、ベルリン映画祭の主演男優賞を受賞している。 
 監督は名匠ノーマン・ジェイソン。 
 かつて「夜の大捜査線」でシドニー・ボワチエを主役に人種問題を骨太に描いた彼ならではの映画といえるだろう。 
 そういえば「夜の大捜査線」でアクの強い警察署長を演じてアカデミー主演男優賞を獲得したロッド・スタイガーがここでも連邦裁判所の判事役で名脇役ぶりを見せており強く印象に残る。

 
 
 
 
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