2000年3月 NO.2
  
 
THE GREAT CARUSO
3/16 歌劇王カルーソ

●監督:リチャード・ソープ ●脚本:ソニア・レヴィン/ウィリアム・ルドウィグ 
●製作:ジョー・パスターナク ●原作:ドロシー・カルーソ 
●撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ ●音楽:ピーター・ハーマン・アドラー 
●出演:マリオ・ランザ/アン・ブライス/ドロシー・カーステン 
 エドュアルド・フランツ/ジャルミラ・ノヴォトナ 
1951年アメリカ作品 

 19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したオペラ歌手エンリコ・カルーソの半生を描いた伝記映画である。 
 イタリアの貧しい労働者だった若きカルーソが生まれ持った美声ひとつで世界のテノール歌手として成功し、舞台で倒れて死ぬまでが華やかなオペラの舞台を再現されながら描かれていく。 
 そして公演先のニューヨークで知り合った女性と恋に落ち、反対されながらも結婚するというラブストーリーが物語の軸となっていく。 
 カルーソを演じるのが、こちらもテノール歌手として名声を博したマリオ・ランザ。 
 劇中20曲以上が素晴らしい美声で歌われる。 
 オペラにはあまり関心のない私でも、その歌声に思わず聴き惚れてしまった。 
 これだけでもこの映画を観た値打ちがあるというものだ。 
 ところで「マリオ・ランザ」の名前はどこかで耳にしたことがあるような気がしていたが、これはニュージーランド映画「乙女の祈り」のなかで主人公の少女たちが憧れる歌手だったということを思い出した。 
 なるほど、この美声なら憧れるのも頷けると、今になって納得したようなわけである。 
 監督のリチャード・ソープはこうした歌もの映画に起用されることが多かったようで、後にプレスリーの「監獄ロック」や「アカプルコの海」も撮っている。

 
 
THE GREEN MILE
3/26 グリーン・マイル

  
●製作・監督・脚本:フランク・ダラボン ●原作:スティーヴン・キング 
●撮影:デビッド・タッターソル ●プロダクション・デザイン:テレンス・マーシュ 
●編集:リチャード・フランシス=ブルース ●音楽:トーマス・ニューマン 
●視覚効果:チャールズ・ギブソン 
●出演:トム・ハンクス/デヴィッド・モース/マイケル・クラーク・ダンカン 
 バリー・ペッパー/ジェフリー・デマン/ダグ・ハッチソン/ジェームズ・クロムウェル 
 ボニー・ハント/サム・ロックウェル/マイケル・ジェター/ハリー・ディーン・スタントン 
 ゲーリー・シニーズ/グラハム・グリーン 
 

 「ショーシャンクの空に」でわれわれに深い感動を与えてくれたフランク・ダラボン監督が再びスティ−ブン・キングの原作をもとに作り上げた感動作。 
 「ショーシャンクの空に」に引き続き、ここでも刑務所が舞台になっている。 
 映画は年老いた主人公ポール・エッジコムが老人ホームの娯楽室のテレビでフレッド・アステア、ジンジャー・ロジャースが踊る「トップ・ハット」の名場面を偶然目にしたところから始まっていく。 
 そして映画を見た彼の思いは1935年の回想場面へと引き戻されていく。 
 この謎を秘めた導入場面からもうすでに気持ちは強く物語に惹きつけられていってしまう。 
 時は1935年の大恐慌時代。 
 ジョージア州のコールド・マウンテン刑務所に1台の護送車が入ってくる。 
 そこから降ろされた新しい囚人は2メートルを越える身体をもつ黒人ジョン・コーフィであった。 
 幼い少女ふたりを殺した大男の殺人犯に、看守たちの間に緊張が奔る。 
 だがそんな不安とは裏腹に、彼は大人しく物静かな男であった。 
 のみならず、彼は暗闇を恐がるという子供のような一面をもった男であった。 
 そんなコーフィの態度に身構えていた看守たちの緊張もいくぶん和らいでいく。 
 こうして彼とE棟の看守たちとの不思議な交流の物語が始まっていくのである。 
 看守主任である若き日のポール・エッジコムを演じるのはトム・ハンクス。 
 彼を支える副主任のブルータスをデヴィッド・モース、さらにジェフリー・デマンとバリー・ペッパーが部下の看守を好演しており、彼らのチームワークがなかなかいい。 
 「ショーシャンクの空に」では看守たちは権力の象徴で、徹底的に悪として描かれていたが、ここでの看守たちは物事の道理をわきまえた人情味のある人間として描かれており、自らの職責と真実の間で激しく懊悩する看守たちである。 
 だがこうした看守のなかにあって新入りのパーシーだけは残忍で卑劣な男として描かれており、ひとり悪の象徴として彼らの前に立ち塞がってくる。 
 彼は州知事の義理の甥という立場を悪用することで、つぎつぎと暴虐非道なことを行っていく。 
 その憎々しいキャラクターはスティーブン・キングならではのものだ。 
 さらにコーフィの後に収容されることになる囚人ビリーがもう一方の悪を象徴している。 
 こうして人間の善と悪の絡み合うダイナミックな小宇宙が形成されていき、人間のさまざまな姿が浮かび上がってくることになる。 
 正義とは何か?真実とは?さらに人間とは?生きるとは? 
 さまざまな重い問いかけがつぎつぎと突きつけられてくる。 
 そして最後には強い感動の嵐に襲われることになる。 
 ここ当分はこの余韻が治まることはないだろう。そう思わせるような感動であった。 
 しばらくはこの気分を引きずっていくに違いない。というよりもできるだけ長くこの感動のなかに浸っていたいというのが本音である。 
 間違いなく今年のベストテンのなかに入る1本である。

 
 
 
 
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