身体ばかり大きくてまわりの子供たちからバカにされてる学習障害児のマックスが隣に越してきた難病を抱えた少年ケビンの前向きな生き方に感化されることで次第に障害を乗り越えていくという話である。
映画はマックスの回想によって進んでいく。
そしてそれはケビンから読むことを薦められた小説「アーサー王物語」の章立ての体裁をなぞったような形になっており、マックスが自ら書きつづったものである。
この「アーサー王伝説」が物語の骨格をなす大きなキーポイントにもなっている。
すなわち体の弱いケビンの何事にも負けない強い精神力はこの「アーサー王伝説」が源泉になっており、自らをアーサー王伝説の騎士になぞらえることによって困難な現実を乗り越える力を得ようとしているのである。
そしてこの伝説をマックスにも教えることでともに冷ややかな現実と戦う相棒となるのである。
マックスがケビンを肩車することによってふたりの身体があたかも合体し、まったく別な人間に生まれ変わったような気分になっていく。
こうしてマックスの頑健な肉体とケビンの明晰な頭脳を併せ持った「勇者フリーク」が誕生することになる。
そしてアーサー王伝説に従った勇者の生き方「勇者の価値はその行動で決まる」を実践していくことになる。
そうすることでそれまで諦めていた現実の様々な困難を乗り越えられるようになっていく。
さらにマックスは彼のトラウマともなっていた「妻を殺した殺人者としての父」とも正面切って立ち向かう勇気を持つようになっていく。
世の中から疎んじられバカにされ続けていた孤独なマックスがケビンの励ましによって次第に本来の自分を取り戻していく姿は感動的である。
どんなに価値がないように思える人間のなかにも隠された素晴らしいものが眠っているということをこの映画は教えている。
そして愛と勇気を尽くして前向きに生きることで時にはそれが目覚めることもあるのだということも。
彼らふたりを見守り支える大人たち、ケビンの母親をシャロン・ストーンが、マックスの祖父母をハリー・ディーン・スタントンとジーナ・ローランズがそれぞれに好演しているのもなかなかいい。
また冒頭流れるスティングの歌う主題歌「フリーク・ザ・マイティ」も心に残る。
心暖まる物語である。
製作 ジェーン・スターツ、サイモン・フィールズ
監督 ピーター・チェルソム 原作 ロッドマン・フィルブリック「フリーク・ザ・マイティ」
脚本 チャールズ・リーヴィット 撮影 ジョン・デ・ボーマン 音楽 トレヴァー・ジョーンズ
出演 エルデン・ヘンソン/キーラン・カルキン/シャロン・ストーン/ジーナ・ローランズ
ハリー・ディーン・スタントン/ロレッタ・リー/ジリアン・アンダーソン/ジェームズ・ガンドルフィーニ
|