これはまた愛すべき楽しさに満ちあふれた青春映画である。
トム・ハンクス初監督作品はロックバンドの若者たちの成功と挫折の物語である。
いわばアメリカ版「青春デンデケデケデケ」といった懐かしさと幸福感に溢れた映画である。
時代は1994年。前年にケネディ暗殺事件があったが、まだ泥沼のベトナム戦争には足を踏み入れていない束の間の平和のなかにあった時代の話である。
ペンシルバニア州の片田舎で電器店を手伝っているガイ(若い頃のトム・ハンクスそっくりなトム・エベレット・スコットが好演)は音楽好きで、深夜ひとりでドラムスの練習に励んでいるが、ある時知り合いのバンドのドラマーが腕を骨折したことから急遽ピンチヒッターをたのまれる。
そしてそのバンドに彼の力強いドラミングが加わったことで曲の印象が一変し、大学の音楽コンテストで優勝してしまう。
さらに町のライヴハウスからは出演を依頼され、その勢いでレコードを出し、それが大手のレコード会社に認められてあっというまにプロとしてデビューすることになる。
さらにデビュー曲「That Thing You Do」(すべてをあなたに)が全米ヒットチャートをかけ登っていく。
こうしたトントン拍子で人気者になっていく様子がノリのいいテンポで描かれていく。
うきうきとした高揚感が軽快な曲と熱狂するファンの熱といっしょに伝わってくる。
もうこれだけで十分この映画の魅力に引き込まれていく。
だがその夢物語も突然幕が引かれることになる。
レコード会社の戦略と衝突したバンドリーダーが突然バンドを降りたことでバンドは空中分解してしまう。
まさに青春の束の間の夢物語である。
そしてこの青春の馬鹿騒ぎと夢の終焉が時代の気分とも重なって、やがてやってくるベトナム戦争という暗い時代を暗示させているのである。
トム・ハンクスの初監督作はまことに見事な出来映えの青春映画であった。
製作 ゲリー・ゴーツマン/ジョナサン・デミ/エドワード・サクソン
監督・脚本 トム・ハンクス 撮影 タク・フジモト
音楽 ハワード・ショア 編集 リチャード・チュウ
出演 トム・エベレット・スコット/ジョナサン・シャーチ/スティーブ・ザーン
イーサン・エンブリー/トム・ハンクス/リブ・タイラー
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