ハリケーンが接近中のアトランティック・シティーのアリーナ前、テレビ・レポーターが降りしきる雨の中カメラに向かってこれから行われるヘビー級ボクシングのタイトルマッチのレポートをしている。
そこへニコラス・ケイジ扮するアトランティック・シティー市警の刑事リック・サントロが現れる。
カメラはレポーターからニコラス・ケイジへと移り、彼の動きに伴ってアリーナのなかへと移動する。
ここから彼がリング・サイドの席に着くまでの延々13分にわたる長回しが始まっていく。
その間に彼の人物像やこれから行われるタイトルマッチの内容や彼に関わる人物たちの紹介が手際よく行われていく。
映像に独特の美学をもったブライアン・デ・パルマらしい快調な幕開けである。
エキサイティングなタイトルマッチを期待するアリーナ内の熱気とこれから起こるに違いない事件の予感がいやがうえにも高まっていく。
そしてタイトルマッチが始まり、チャンピオンのノック・ダウン、それに続く観戦中の国防長官の暗殺が行われるやアリーナ内は一挙にパニック状態になっていく。
国防長官の護衛の任にあったケヴィン・ダン海軍中佐(ゲイリー・シニーズ)とリックはただちにアリーナを封鎖するや捜査の指揮をとることになる。
こうして事件の解明と犯人割り出しの捜査が行われるのだが、謎が解明されていくにしたがって残念ながら映画はトーン・ダウンしていってしまう。
前半部分で見せた力強さが感じられなくなってしまうのだ。
さらにやけにハイテンションだった悪徳刑事リックの威勢のよさが事件の経過とともに薄れていくのも少々不満である。
どうせならこの調子のよさのまま突っ走ってほしかったところである。
後半にもデ・パルマらしい華麗なカメラワークが見られるものの、いまいちパワー不足の印象はまぬがれない。
さらに映像に仕掛けられたいくつかの謎もいささか判りにくく、印象が薄い。
前半が快調だっただけにいかにも惜しまれる。
製作総指揮 ルイス・A・ストローラ 製作・監督 ブライアン・デ・パルマ
原案 ブライアン・デ・パルマ/デビッド・コープ
脚本 デビッド・コープ 撮影 スティブン・H・ブルーム 音楽 坂本龍一
出演 ニコラス・ケイジ/ゲーリー・シニーズ/ジョン・ハード
カーラ・グジーノ/スタン・ショウ/ケヴィン・ダン
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