2011年2月10日
 
 
マイ・ブラザー
BROTHERS
 
 
2009年アメリカ作品。  上映時間105分。 監督: ジム・シェリダン 製作: ライアン・カヴァナー/シガージョン・サイヴァッツォン/マイケル・デ・ルカ 製作総指揮: タッカー・トゥーリー/ザック・シフ=エイブラムズ 脚本: デヴィッド・ベニオフ オリジナル脚本: スサンネ・ビア/アナス・トマス・イェンセン 撮影: フレデリック・エルムズ プロダクションデザイン: トニー・ファニング 衣装デザイン: デュリンダ・ウッド 編集: ジェイ・キャシディ 音楽: トーマス・ニューマン 主題歌: U2 『WINTER』 出演: トビー・マグワイア/ジェイク・ギレンホール/ナタリー・ポートマン/サム・シェパード/クリフトン・コリンズ・Jr/メア・ウィニンガム/テイラー・ギア/ベイリー・マディソン/キャリー・マリガン/パトリック・フリューガー/ジェニー・ウェイド/オミッド・アブタヒ/ナヴィド・ネガーバン/イーサン・サプリー/アーロン・シヴァー/レイ・プルーイット
 
 戦争で受けた傷、戦争後遺症を描いた映画である。
優等生で家族思い、部下たちからの信頼も篤く優秀な兵士、元海兵隊員の父にとっても自慢の息子、そんな優れた人物が戦争という狂気の中で圧殺されていく理不尽さと怖さ。
その姿はまさに現代アメリカの悲劇である。
それを映画は冷徹に見つめていく。

かつてアメリカが描く戦争映画は、愛国心にあふれたヒーローが活躍する戦争映画だった。
しかしベトナム戦争以後はそうしたヒーローはいなくなり、戦争に苦悩する兵士たちの物語へと移行してゆく。
ハル・アシュビーの「帰郷」、マイケル・チミノの「ディア・ハンター」、フランシス・フォード・コッポラの「地獄の黙示録」、スタンリー・キューブリックの「フルメタル・ジャケット」、そしてオリバー・ストーンの「プラトーン」と「7月4日に生まれて」、いずれの作品も混迷するアメリカの現実に真正面から向き合った映画であった。
そしてそうした姿勢は今も変わらず続いており、混迷の度合いはますます深く、さらに複雑なものとなっている。
「マイ・ブラザー」もそうした流れの中に位置する映画である。
観るのが辛く、痛々しくなる映画である。

それにしてもトビー・マグワイアとジェイク・ギレンホールは顔がよく似ている。
トビー・マグワイアが体重を落として劇痩せしているので、それほどでもないが、まだ彼らが少年だった頃、「遠い空の向こうに」で初めてジェイク・ギレンホールを見たときは、てっきりトビー・マグワイアだと思い込んでしまったほど。
そんなふたりが兄弟を演じているから、ほんとうの兄弟に見えてしまう。

トビー・マグワイアは映画に出るたびに、その肉体を変貌させる俳優である。
「スパイダーマン」ではハードなトレーニングによって筋肉質な体に作り変え、「シービスケット」では体重を落とし、また今回もその時以上に体重を落として役に挑んでいる。
このように目まぐるしく肉体改造を行うのは、彼のほかにはクリスチャン・ベールがいる。
ふたりが双璧だろう。
そうした肉体改造には、賛否両論があるかもしれないが、いずれにしてもうした姿勢で役に臨む彼らの熱意が画面から確実に伝わってくる。

監督のジム・シェリダンは、アイルランドを舞台に映画を撮ることで知られた監督だ。
「マイ・レフトフット」「父の祈りを」「ボクサー」といった代表作はいずれもアイルランドを舞台にしており、しかも主演はいずれもダニエル・デイ=ルイス、このふたりのコンビはアイルランド最強のコンビといえよう。
そんなジム・シェリダンが舞台をアイルランドからアメリカに、そしてアフガニスタンに移して戦争の狂気を真正面から描いている。
戦争はひとり兵士だけの問題ではなく、いやおうなく家族やその隣人たちをも巻き込んでいってしまう。
そんなひとりひとりの苦悩が、ジム・シェリダンらしい肌理の細かさで描かれていくにしたがって、悲劇の輪がじわじわと広がっていく。
そして混乱の後、先の見えない重いテーマを提示して映画は終わるが、果たしてその先にあるのは希望か絶望か。
闇の暗さは計り知れないほど深い。
<2011/2/16>

 
 
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