2010年12月19日
 
 
新しい人生のはじめかた
LAST CHANCE HARVEY
 
 
2008年アメリカ作品。  上映時間93分。 監督/脚本: ジョエル・ホプキンス 製作: ティム・ペレル/ニコラ・アスボーン 製作総指揮: ジャワル・ガー 撮影: ジョン・デ・ボーマン プロダクションデザイン: ジョン・ヘンソン 衣装デザイン: ナタリー・ウォード 編集: ロビン・セイルズ 音楽: ディコン・ハインクリフェ 出演: ダスティン・ホフマン/エマ・トンプソン/アイリーン・アトキンス/ジェームズ・ブローリン/キャシー・ベイカー/リチャード・シフ/リアーヌ・バラバン/ブロナー・ギャラガー/ジェレミー・シェフィールド/ダニエル・ラパイン/パトリック・バラディ/アダム・ジェームズ/マイケル・ランデス
 
原題は「LAST CHANCE HARVEY」
「新しい人生のはじめかた」という邦題はちょっと軽い。
この題名だと、まるでハウツーもののようで、よくありがちな、ごく普通のラブ・コメディとしか思えない。
せっかくのいい内容が、これでは台無しになってしまう。
実際、観る前は、そうした先入観を持たされていたので、レンタルするのをちょっとためらった。
だが、借りてよかった。
いっしょに観た家内とふたりして何度も涙を流してしまったのである。

傷つくことが嫌で、幸せに臆病になっている40代の独身女性と、盛りを過ぎたCMの作曲家がともに寂しさを抱えながら出会い、次第に惹かれあっていく3日間の出来事を描いた物語だが、そのふたりの寂しさの背景が身につまされる。
これまでの人生を真面目にひたむきに生きてきたはずなのに、それはけっして満足のいくものではなく、今はひとり寂しく崖っぷちに立たされている。
そうした心の痛手を誰にも打ち明けることができず、相談する相手もいない孤立無援の寂しさ。
その孤独感がひしひしと伝わってくる。
それがふとしたきかけで知り合った相手にポツリポツリと話していくうちに、しだいに心が癒されていく。
相手が見知らぬ他人だからこそ言える弱音やわだかまり、心の底にしまいこんでいた本音が何の抵抗もなくつぎつぎと飛び出してくる。
含蓄のある大人の会話が心地いい。
そして思慮深く、ときにおずおずとしながらも少しづつ歩み寄っていく姿がほほえましい。
ほっとする優しさ、暖かさ、さまざまな人生の浮き沈みを経験してきたからこそ見せることのできる相手への思いやり。
そのあたりの描き方が細やかでうまい。
若い男女の恋愛のように情熱を燃やす恋愛ではなく、気がつくといつの間にか相手がかけがえなない人物になっているという大人の恋愛が素敵である。

「わたしたちはうまくいくのかしら?」
「見当もつかない」「しかし頑張る」

ふたりが仲良く寄り添って歩いていくラストでは、思わず拍手を贈りたくなった。
こうした深い味わいは、ダスティン・ホフマンとエマ・トンプソンという名優同士が演じたからこそのものであろう。
滋味あふれるふたりの演技に、いつまでも観ていたいという気にさせられた。
また監督、脚本のジョエル・ホプキンスは、これが2作目とは思えない才能を見せている。
その成熟した手堅い描き方には感心させられた。
今後どんな活躍を見せてくれるか、大いに期待したい。
久しぶりに観た大人の映画に大満足であった。
<2010/12/22>

 
 
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