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2007年イギリス作品。 上映時間108分。 監督/脚本: ウディ・アレン 製作: レッティ・アロンソン/スティーヴン・テネンバウム/ギャレス・ワイリー 製作総指揮: ヴァンサン・マラヴァル 撮影: ヴィルモス・ジグモンド プロダクションデザイン: マリア・ジャーコヴィク 衣装デザイン: ジル・テイラー 編集: アリサ・レプセルター 音楽: フィリップ・グラス 出演: ユアン・マクレガー/コリン・ファレル/ヘイリー・アトウェル/サリー・ホーキンス/トム・ウィルキンソン/フィル・デイヴィス/ジョン・ベンフィールド/クレア・ヒギンズ |
ウディ・アレンの映画は「それでも恋するバルセロナ」(2008年)が今ひとつピンとこなかったので、続くこちらも実はあまり期待はしていなかったのだが、(実際には「ウディ・アレンの夢と犯罪」が2007年製作で、先に作られているが)予想に反してなかなかの佳作であった。 話の筋はシンプルで、ロンドンに住むごくありふれた兄弟が、少しばかり身の丈を越えた野心を持ったばかりに、犯罪の道へと足を踏み入れてしまう悲喜劇を描いている。 野心家の兄をユアン・マクレガー、ギャンブル好きな弟をコリン・ファレルといった個性派のふたりが演じているが、そのコンビネーションがなかなか味があっておもしろい。 兄は偶然知り合った女優の卵にぞっこんで、金持ちを気取った手前、大金が必要である。 いっぽう弟は自動車修理工場で働く労働者で、ガールフレンドとのささやかな家庭を築くことを夢見ているものの、ギャンブル好きが高じて多額の借金を背負い込んでしまう。 そんな行き詰ったふたりの前に現れたのが、アメリカで事業に成功した伯父さん。 彼を投資事業に担ぎ出して大金を手にしようと相談を持ちかけるが、逆にふたりは抜き差しならない犯罪の道へと引き込まれてしまう。 伯父さんから発せられる悪魔のささやきに、逡巡しながらも結局はその話に乗ってしまうことになる。 そこから殺人を犯すまでの揺れ動く様子が、古典的なミステリーのスタイルを匂わせながら描かれていく。 「マッチポイント」同様の肌理の細かい描写に目が放せなくなる。 そして完全犯罪と思われた事件が意外な展開を見せていくことになる。 「人生は不条理でままならない。いつも皮肉に満ちている。」というウディ・アレン流の皮肉たっぷりなストーリーが巧妙に展開されていく。 いつものように独特のセリフの面白さを味わいながら、ハラハラ、ドキドキ感をたっぷりと味わった。 映画の冒頭、兄弟ふたりが手に入れるヨットの名前が「カサンドラズ・ドリーム(Cassandra's Dream)」、それが映画の原題にもなっている。 「カサンドラ」とはギリシャ神話に登場する、トロイアの王女の名前で、悲劇の予言者としても知られている。 その悲劇的な生涯から「不吉」「悲惨な結末」といった意味で使われることが多い。 そんな不吉な言葉をなぜヨットの名前にしたかといえば、弟のコリン・ファレルがドッグ・レースで勝った金でヨットを買ったことから、その犬の名前「カサンドラズ・ドリーム」にあやかったのである。 ギリシャ悲劇好きのウディ・アレンらしいところだが、ここにも彼一流の皮肉と諧謔の精神が表れている。 この映画は「マッチポイント」「タロットカード殺人事件」に続くロンドン3部作の最終章ということになっているが、ニューヨーク派のウディ・アレンにとって、今やロンドンは彼の映画になくてはならない街になっている。 ファンとしては3部作といわずに、ニューヨークものに匹敵するくらいの数の映画をこれからも作り続けてほしいと願うところだ。 多作を旨とする彼のことだから、案外そんな希望も叶えてくれるかもしれない。 <2010/12/27> |
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