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2009年日本作品。 上映時間107分。 監督: 中西健二 原作: 藤沢周平 脚本: 長谷川康夫/飯田健三郎 撮影: 喜久村徳章 音楽: 武部聡志 主題歌: 一青窈 『花のあと』 語り: 藤村志保 出演: 北川景子/甲本雅裕/宮尾俊太郎/相築あきこ/佐藤めぐみ/市川亀治郎/伊藤歩/柄本明/國村隼 |
藤沢周平の短編小説を映画化した「花のあと」を観た。 例によって庄内地方を舞台にした時代劇である。 女でありながら男たちをはるかに凌ぐ剣の腕を持つ主人公、以登(北川景子)。 彼女が秘かに想いをよせる剣士、江口孫四郎(宮尾俊太郎)とのたったいちどの立合いにその想いのすべてをぶつけ、それを深く心の奥に仕舞いこんで、新たな人生へと足を踏み出していく。 だが、江口孫四郎が藩命を果たせず自ら命を絶つという事件が起きたことで、穏やかに過ぎていくかに思われた以登の人生が俄然波乱に満ちたものになってくる。 そしてその事件の裏には、彼の妻との不義密通を続ける重臣、藤井勘解由(市川亀治郎)の仕掛けた罠があったということがやがて明らかになってくる。 それを知った以登は勘解由に果し合いを挑み、孫四郎の敵を討とうとする。 映画の鍵は、たったいちど立ち合っただけの初恋の相手のために、命をかけてまで敵を討とうとする以登の姿に、いかに説得力をもたせるかにかかっている。 観客にそのことで違和感を感じさせないことが、この映画最大のポイントになってくる。 そしてそれはかなりの程度に成功していると思う。 女ながらに以登を一流の剣士に育て上げた父親、寺井甚左衛門(國村隼)の厳しさと優しさ、さらには彼らの日常の所作や佇まいに見られる奥ゆかしさや厳しさ、そしてそれを取り巻く美しい自然描写が、以登の凛とした心根を映し出すための大きな力となっている。 そうしたデティールを丁寧に描いていくことで、以登のもつ高潔な精神が輝きを増して迫ってくる。 なるほどこういう人間であれば、道に外れたこと、悪行に異を唱え、そうした行動に走るのも無理はないなと思わせてくれるものがある。 また一本気な江口孫四郎とは対照的に、以登の許婚の片桐才助(甲本雅裕)の飄々とした存在がこの映画に余裕と広がりをもたらせている。 彼は後に筆頭家老として活躍することになるが(ナレーションによってそれが語られる。ちなみに藤村志保によるナレーションは、年老いた以登が若き日を回想するという体裁となっている。)そうしたことが素直に頷けるキャラクターである。 見かけは風采が上がらず、才色兼備の以登とは不釣り合いな男に見えるが、いざ事が起きた時には的確に物事の処理に当たるという、隠された能力をもつ男である。 そして彼はすべてを飲み込んで、以登の敵討ちの隠れたサポート役を見事に果たすのである。 だれもが賞賛する美丈夫な江口孫四郎の壊れやすさに対し、竹のようなしなりを持つ片桐才助の逞しさも、この映画の見所のひとつであろう。 ところで彼のキャラクターを見ているうちに、黒澤明監督の映画「椿三十郎」で伊藤雄之助が演じた城代家老のとぼけた姿を思い出した。 片桐才助も、おそらくこうした家老になったのではないか、そんなふうな想像をしながら楽しんだのである。 「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」「蝉しぐれ」「武士の一分」「山桜」に続いて、また新しい藤沢小説の映画化がなされたことを、ファンとしてうれしく思う。 さらに平山秀幸監督の「必死剣 鳥刺し」という映画も控えている。 こちらも今から楽しみである。 <2010/11/14> |
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