2009年4月2日
 
 
歩いても 歩いても
 
 
 
2007年日本作品。  上映時間114分。 監督/原作/脚本/編集: 是枝裕和  企画: 安田匡裕  撮影: 山崎裕  美術: 磯見俊裕/ 三ツ松けいこ  衣裳: 黒澤和子  音楽: ゴンチチ   出演: 阿部寛/ 夏川結衣/ YOU/ 高橋和也/ 田中祥平/ 寺島進/ 加藤治子/ 樹木希林/ 原田芳雄
 
長男の命日に久しぶりで集まった家族のごくありふれた日常の姿をスケッチすることで、家族のなかに横たわるさまざまな問題をあぶり出してみせる。
ドラマチックなことは何も起こらない。
登場する人物たちも等身大のリアルな人間たちばかりで、どこにでも見られる、ごく普通の家族の姿である。
だが、その何気ない家族の集りのなかで交わされる、とりとめない会話から滲み出てくる本音には、時にハッとさせられるものがある。
そこから家族であることの、はかなさややっかいさが浮かび上がってくる。

家族のそれぞれを繋ぐものは、「愛」であるのは間違いのないところ。
だが家族が共有する長い時間の中では、それぞれの思惑がすれ違い、ぶつかり合い、いがみ合い、そして許し合う、といったことを繰り返す。
それは面倒であり、ややこしくもあり、また時には逃げ出したくもなるが、それでも懐かしく、愛おしく、だからこそ離れられず、いつしか時間だけが過ぎていく。
そして次第に老いを迎え、やがて死を迎え、気づいた時には家族の形が少しだけ変わっていく。
そうして確実に次の代へと繋がっていくのである。

この映画を観ながら、観客は登場人物のなかに自らの姿と重なるものを見つけることになるかもしれない。
そして親子とは、夫婦とは、兄弟とは、といったことをあらためて考えることになる。
ときにこうした会話だけの物語が煩わしくも感じるが、それは家族というものの煩わしさに通じるからなのかもしれない。

泣き喚いたり、叫んだりといった振幅の激しい喜怒哀楽はいっさいなく、とりとめもない会話だけに終始する映画だけに、却って人生の重さ、哀しみがより強く伝わってくるように思う。
そうしたものをしみじみと味わうことになる映画である。

監督は『幻の光』『誰も知らない』の是枝裕和監督。

 
 
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