2006年12月15日
 
 
武士の一分(いちぶん)
 
 
 
2006年日本作品。 上映時間121分。 監督/脚本: 山田洋次  製作: 久松猛朗  プロデューサー: 深澤宏/ 山本一郎  製作総指揮: 迫本淳一  原作: 藤沢周平  脚本: 平松恵美子/ 山本一郎  撮影:  長沼六男  美術:  出川三男  衣裳:  黒澤和子  編集: 石井巌  音楽: 冨田勲  音楽プロデューサー: 小野寺重之  出演: 木村拓哉/ 檀れい/ 笹野高史/ 小林稔侍/ 赤塚真人/ 綾田俊樹/ 近藤公園/ 岡本信人/ 左時枝/ 大地康雄/ 緒形拳/ 桃井かおり/ 坂東三津五郎
 
 「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」に続く山田洋次監督による藤沢周平原作の時代劇映画。 
 原作は「隠し剣 秋風抄」の中の一遍「盲目剣谺(こだま)返し」である。 
 藩主の毒見役を務める侍が毒見の際に食べた貝の毒にあたって失明してしまうという事件を発端に、それまで何事もなかった素朴でつましい平穏な家庭はいっきに突き崩されていく。 
 さらにそれをきっかけに巻き起こる波乱の顛末がサスペンスたっぷりに描かれていく。 
 山田監督は当初この映画の題名を「愛妻記」としたそうだが、その題名が示すように夫婦の愛情物語が映画の柱になっている。 
 そしてそれが無残にも踏みにじられるという事態に及ぶや、「武士の一分」にかけて敢然と立ち上がるという物語である。 
 映画の冒頭、主人公三村新之丞とその妻・加世の平穏な日常が丹念に描かれていく。 
 その淡々とした立ち居振る舞いのなかに、お互いを思い遣る愛情の深さ、優しさを読み取ることができる。 
 日常の何気ない風景を積み重ねることで人生の機微を描いてゆく山田監督お得意の映画スタイルであるが、ここではその熟練の技をたっぷりと見せてくれる。 
 そしてその二人を陰になく日向になく支え続けているのが下男の徳平である。 
 その仕え方は主従の関係というよりもむしろ肉親の情に近いもので、新之丞との冗談を交えた微笑ましいやりとりや、日々の働く姿からも確実に伝わってくる。 
 そんな彼が、誰にも知られることなく動いていくこの物語のすべてを目撃する唯一の人間としての立場を担っているのである。 
 それはあたかも「ミリオンダラーベイビー」のモーガン・フリーマンを思い起こさせるような存在である。 
 若いふたりの苦境にそっと寄り添い、ともに泣き、苦しみながら貴重な証人として、事件の一部始終を見守っていくのである。 
 映画のほとんどは主人公、三村新之丞の家を中心に展開されていく。 
 そこでの三人の生活が時にユーモラスに、また時に緊張をはらんで描かれるなかから、次第に物語の核心部分が浮かび上がってくる。 
 三村家の庭の移りゆく自然描写が美しい。 
 それは物語のゆったりとした時間経過を示すとともに、映画に深い奥行きをもたらせている。 
 さらにその自然描写に負けず劣らず主人公三人の魅力あるキャスティングも、この映画にふくらみをもたらせた大きな要素になっている。 
 木村拓哉の凛々しさ、新人である檀れいの控えめな優しさと美しさ、笹野高史の人情味あふれるユーモア、そのアンサンブルが見事に溶け合って、観るものに熱いものを味あわせてくれるのである。 
<2007/06/28>

 
 
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