2005年7月12日
 
 
血と骨
 
 
 
2004年松竹作品。 上映時間144分。 監督/脚本: 崔洋一  製作: 若杉正明  プロデューサー: 榎望  企画: 若杉正明  原作: 梁石日  脚本:  鄭義信  撮影: 浜田毅  美術: 磯見俊裕  衣装デザイン: 小川久美子  編集: 奥原好幸  音楽: 岩代太郎  音楽プロデューサー: 佐々木次彦  照明: 高屋齋  出演: ビートたけし/ 鈴木京香/ 田畑智子/ オダギリジョー/ 松重豊/ 中村優子/ 唯野未歩子/ 濱田マリ/ 柏原収史/ 塩見三省/ 北村一輝/ 國村隼/ 寺島進/ 伊藤淳史/ 仁科貴/ 佐藤貢三/ 中村麻美
 
 梁石日(ヤン・ソギル)原作のベストセラー小説の映画化作品。 
 自らの父親をモデルにしたこの小説は、激しい暴力と神話的な色彩を帯びたストーリーで話題を呼んだ作品である。 
 映画化困難と言われたこの作品を監督したのは崔洋一、彼も父親が韓国人という在日2世である。 
 崔洋一監督にとって梁石日作品の映画化は1993年の「月はどっちに出ている」に続いて2度目のことになる。 
  
 1920年代に一攫千金を夢見て済州島から大阪に渡ってきた朝鮮人、金俊平。 
 己の肉体だけを信じ、自らの欲望の実現のためには何ものも顧みず、圧倒的な力の行使だけで突き進んでいくという悪魔的なキャラクターの金俊平、こんな強烈なキャラクターの主人公は記憶にあるかぎりではこれまでの日本映画にはなかったものである。 
 演じるのはビートたけし、「これまでで一番激しく、一生懸命やった。この作品は俺の記念碑的なものになる。」と語ったとおりの熱演で金俊平を演じている。 
 蒲鉾工場で同胞の在日労働者を搾取することで金を貯め、それを元手に貸し金業を営み、高利と悪辣な取り立てで財を成していく姿が戦中、戦後という混乱の時代を背景に描かれていく。 
 彼が信じるものは自らの肉体と力だけ、そして追い求めるものは金と色という欲望だけ。 
 それを邪魔しようとするものがあればたとえそれが家族であろうと力で排除してしまう。 
 そこには愛情のかけらも感じさせない。 
 戦後という未曾有の混乱期を生き抜くためには力だけしかなかったというのは当然だとしても、金俊平のそれはわれわれの想像をはるかに超えたものである。
 その迫力とデモーニッシュさには圧倒される。
 だが一方では次第にその迫力に胡散臭さを感じ始めるのも事実だ。
 ビートたけしが金俊平を熱演すればするほど、本来のリアルさから遠ざかっていくのを感じてしまう。
 やくざさえも一目置くような人物、彼らに「化け物」と言わしめるほどの悪辣非道の人物ではあるが、ただそれだけではない深い内面を持っているはずである。
 否定的な人物であればあるほど、そこには掘り下げるに値する人間的な深い闇が横たわっているにちがいない。
 その冷酷さはどこからくるものなのか、またそこには一片の人間的な悲しみもないものなのだろうか、そんな疑問が湧いてくる。
 その手がかりは映画では描かれなかった金俊平の前半生のなかにあるにちがいないのだが、そこが見てみたいと思うのは果たして私ひとりだけだろうか。
 構想6年、7時間以上の映画になるシナリオを20数回書き直したというほど原作と格闘した情熱の痕跡は映画から読みとれるものの、心底酔うことはできなかった。
 果敢に挑戦したものの、見事討ち死にしてしまった作品、壮大な失敗作といった印象である。
<2005/09/20>

 
 
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