2005年6月2日
 
 
ミリオンダラー・ベイビー
MILLION DOLLAR BABY
 
 
2004年アメリカ作品。 上映時間133分。 監督/製作/音楽: クリント・イーストウッド 製作: ポール・ハギス/ トム・ローゼンバーグ/ アルバート・S・ラディ 製作総指揮: ロバート・ロレンツ/ ゲイリー・ルチェッシ 原作: F・X・トゥール『テン・カウント』  脚本: ポール・ハギス 撮影: トム・スターン  美術: ヘンリー・バムステッド 編集: ジョエル・コックス 出演: クリント・イーストウッド/ ヒラリー・スワンク/ モーガン・フリーマン/ アンソニー・マッキー/ ジェイ・バルチェル/ マイク・コルター/ ブライアン・オバーン/ マーゴ・マーティンデイル/ マイケル・ペーニャ/ ベニート・マルティネス/ ブルース・マックヴィッティ/ ネッド・アイゼンバーグ
 
 昨年度のアカデミー賞、主要4部門(作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞)を受賞した話題の映画である。 
 「ミスティック・リバー」では監督業に徹したイーストウッドだったが、今回は監督、主演を兼ねている。 
 自分の生き方を曲げない頑固一徹の老トレーナー、フランキー役はやはりイーストウッドをおいて他には考えられないということだ。 
 そして彼を陰になり日向になって支えるボクシング・ジムの雑役係スクラップをモーガン・フリーマンが、また貧しい境遇のなかで唯一ボクシングに夢を見いだそうとする女性マギーをヒラリー・スワンクが演じて、ともにアカデミー賞に輝いている。 
 主役3人はいずれも社会の日陰を歩いてきた人間たちである。 
 フランキーは優秀なトレーナーだが、ボクサーの将来を考えるあまり、なかなか大きな試合に挑戦させようとはしない。 
 だが成功を急ぐボクサーたちはそんな指導方針に反発して彼のもとを離れてしまう。 
 せっかくチャンピオンを狙える逸材を育てながらも、その直前でいつも頓挫してしまう。 
 それでもフランキーは自分のやり方を変えようとはしない。 
 そんな彼にひとりの女性が弟子入りを志願してくる。 
 トレーラーハウスで育ち、13歳からウェイトレスの仕事をしているという不遇の女性、マギーである。 
 だが、フランキーは「女性にボクシングは教えない」と相手にしない。 
 それでも諦めずひとり黙々と練習に励むマギーを雑役係のスクラップは優しく見守る。 
 彼もかつてはチャンピオンを目指して戦ったボクサーであった。 
 彼はマギーのなかにボクサーとして確かな資質を見いだし、フランキーを説得、さらにマギーの執念についにフランキーも折れる。 
 こうしてふたりの本格的なトレーニングが始まる。 
 そしてマギーの才能が開花、チャンピオンに挑戦するまでに成長していく。 
 ここまでが映画前半の展開である。 
 が、後半は一転して重く悲しい展開へと転調していく。 
 そしてこれこそがイーストウッドがこの映画でもっとも描きたかったことであり、またこの映画を一段と価値あるものへと押し上げる大きな要素になっている。 
 フランキーもマギーもともに家族を失った者同士である。 
 フランキーは届くはずのない手紙を毎日娘に書き送っている。 
 またマギーもボクシングで手に入れた大金で故郷の母親と妹に新しい家をプレゼントするものの、その思いは届かない。 
 そして自分をほんとうに愛し理解してくれた父親は今はいない。 
 そんなふたりがボクシングで出会い、成功への階段を登っていくなかで次第に父親と娘のような関係を築いていく。 
 仮の家族、失ったものを代替えする家族、だがその愛情と絆は本物の家族に負けないもの、いや、それ以上の強さをもっていることがある悲劇の中で明らかになっていく。 
 それはあまりにも過酷な現実である。 
 その現実のなかで迫られる究極の選択。 
 背負わされた十字架のなんと重いことか。 
 だが、そのことにけっして目を背けることなく、監督イーストウッドは強い視線で直視する。 
 そしてそんなふたりの関係をスクラップがじっと見守る。
 フランキーとの長年のつきあいから彼のことを誰よりも理解しているスクラップ。
 控えめではあるが、言うべきことは言う彼がフランキーの心の声を代弁するかのように物語のナレーションを司る。
 その優しく愛情に満ちたナレーションが映画の重さをわずかながら緩めてくれる。
 救いのない内容のはずなのに映画を見終わったあとに幾分かの清々しさを感じることができるのはそのためだろう。
 70歳を越えてなおこのような傑作を創り続けることができるイーストウッドに拍手を送りたい。
<2005/6/21>

 
 
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