2005年1月10日
 
 
深呼吸の必要
 
 
 
2004年日本作品。 上映時間123分。監督: 篠原哲雄 製作: 坂上直行/ 久松猛朗/ 川城和実/ 安田匡裕  プロデューサー: 千野毅彦/古川一博/ 森谷晁育/ 加藤悦弘  エグゼクティブプロデューサー: 遠谷信幸/ 高野力/ 黒坂修/ 熊田忠雄  企画: 小滝祥平/ 岡田惠和  脚本: 長谷川康夫  撮影: 柴主高秀  美術: 都築雄二/浅野誠  編集: 奥原好幸  音楽: 小林武史  主題歌: My Little Lover  照明: 長田達也  出演: 香里奈/ 谷原章介/ 成宮寛貴/ 金子さやか/ 久遠さやか/ 長澤まさみ/ 大森南朋/ 北村三郎/ 吉田妙子
 
 男女7人の若者たちがただひたすらにサトウキビを刈るというだけの映画である。 
 特別なことは何も起こらない、説明的なセリフは極力排し、必要最小限度のセリフがつぶやかれるだけ、青春映画特有の大げさな芝居というものもなく、淡々とサトウキビを刈る毎日だけが過ぎていく。 
 そんなシンプルな映画なのに、終わる頃には、しみじみとした感動に包まれる。 
 おもいっきり「深呼吸」をした後のような清々しさを味わえる。 
  
 舞台は沖縄の宮古島、 
 サトウキビ収穫作業のアルバイトに応募した都会の若者たちが島にやってくる。 
 雇い主は平良さんという老夫婦、そしてその作業を指揮するのは毎年この時期になると島にやってくるサトウキビ刈りのベテランの青年。 
 見渡す限りに広がる一面のサトウキビ畑。 
 これを35日間という決められた期間内にすべて刈り取ってしまわなければならない。 
 作業の手順を教わって慣れない手つきでサトウキビを刈り始める若者たち。 
 誰にもやる気が見られない。いや、それどころか何かと理由をつけては不平ばかりを口にする。 
 そんな彼らが時間とともに微妙に変化してゆく様子を丹念に描いてゆく。 
 彼らはそれぞれに鬱屈したものを抱えて島にやって来たのに違いない。 
 だがそれらしい悩みや傷の一端がほんの少し披露されるだけで、それ以上には語られることはない。 
 それは青春期特有の誰もがいちどは抱え込むに違いない悩みや挫折である。ことさら目新しいものではない。そしてそれをここで披露するのがこの映画の目的ではなく、こうした集団生活のなかで彼らがどう癒され、再生していくかということが重要な関心事なのである。 
 まるで化学実験のような細心さでその微妙な変化を丹念にすくい取っていく。 
 「失敗したってかまわない。また初めからやり直せばいいさ。」「なんくるないさあ(どうってことないさ、なんとかなるさという意味の沖縄言葉)」という平良さんの言葉、「言いたくないことは言わなくてもいい」というルール、そして「自分たちでいいんだ。」「人の役にたっている、必要とされている」という実感によって少しづつ変化が生まれてくる。 
 それまでは「イヤイヤやらされていた」作業が自主的なものに変わってくる。 
 やらされるのではなく、自ら積極的に仕事をするようになっていく。 
 そして力を合わせて作業するうちにバラバラだった彼らに一帯感が生まれる。
 またそれによってお互いを思いやる優しさが生まれてくる。
 作業のピッチが上がり、予定よりも大幅に遅れていた収穫も順調に回復していく。
 サトウキビが目に見えて少なくなっていくにしたがって感じられる達成感。
 どんな仕事も一生懸命やることでおもしろく充実したものになってくるという労働の原点を彼らは身をもって知ることになる。
 篠原監督には過去に「草の上の仕事」という作品がある。
 ふたりの青年が草原の草をただひたすら刈るという内容の映画だが、それをさらにもう一歩進めたのがこの「深呼吸の必要」である。
 沖縄の美しい自然の中を吹き渡る爽やかな風を感じられる映画である。
<2005/2/23>

 
 
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