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2002年スペイン作品。上映時間 113分。監督/脚本: ペドロ・アルモドバル 製作/製作総指揮: アウグスティン・アルモドバル 撮影: ハヴィエル・アグィレサローベ 音楽: アルベルト・イグレシアス 出演: ハヴィエル・カマラ/ ダリオ・グランディネッティ/ レオノール・ワトリング/ ロサリオ・フローレス/ ジェラルディン・チャップリン/ パス・ベガ/ ピナ・バウシュ/ カエターノ・ヴェローゾ/カメオ出演: セシリア・ロス |
変態映画を撮り続けてきたペドロ・アルモドバルの円熟と風格を感じさせられた映画である。
前作「オール・アバウト・マイ・マザー」で新境地を開いたペドロ・アルモドバルだが、この作品でそれをさらに深めたという印象だ。 4人の男女の愛と友情の物語。 事故で昏睡状態に陥ったふたりの女性、バレリーナのマリシアと女闘牛士リディア、そして彼女たちを愛する記者のマルコと看護士のベニグマ、彼らの過去と現在が交錯しながらショッキングな愛と友情が語られる。 毎日丹念にマリシアの身体を拭い、化粧を施す看護士のベニグマ。 肉体的にはこれほど近くにいながらも、その距離のなんと遠いことか。 けっして届くはずのないベニグマの一方通行の愛、それでも彼はマリシアに語り続ける。 他者とうまくつきあえない不器用な男ゆえの愛情表現、そのグロテスクな愛をペドロ・アルモドバルは優しく、美しく謳いあげていく。 失われた愛、けっして届くことのない愛、そしてそれゆえに果てることのない男たちの深い孤独。 すべて否定的に思われるこれらの状況がアルモドバル監督の手に委ねられると、俄然美しい輝きを放つ。 そして矛盾を抱え持つ人間の愚かさ、不思議さに対する深く暖かい愛情が切ないほど伝わってくるのである。 映画の冒頭と終幕に登場するドイツの舞踏家ピナ・バウシュのダンス、そしてブラジル人ミュージシャン、カエターノ・ヴェローゾがライブで歌う「ククル・クク・パロマ」がマルコとリディアの心を捉えたように観る者の心を鷲掴みにする。 そしてどちらかといえば地味な部類のこの映画にカラフルな色彩を加えている。 アルモドバル監督の卓越したセンスのよさを感じさせる起用である。 この映画はアカデミー脚本賞を受賞しているが、これは外国映画としては37年ぶりの受賞である。 <2005/09/01>
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