子供のいない弁護士夫婦の家庭に旧友の娘が家出をして転がり込んできたことから巻起こる騒動を描いた川端康成原作の映画化作品。
同じ原節子主演の映画「めし」も似たようなストーリーであったが、あちらは貧しいサラリーマン、こちらは裕福な弁護士家庭が舞台になっている。
当時のブルジョア家庭のありようを川島監督は風俗をからめながらソツなくまとめているが、大傑作「幕末太陽伝」の次の作品としてはいささか物足りない。
だが、そんな落差を見せるところが川島監督らしさなのかもしれない。
タイトルバックで当時シスターボーイと呼ばれた丸山明宏(若き日の美輪明宏)が登場して谷川俊太郎作詞、黛敏郎作曲のシャンソンを歌うのにはいささか意表をつかれて驚かされた。
美輪明宏の姿は今以上に倒錯していて官能的である。
こんなところにも川島監督らしい遊びが見える。
清楚なイメージの強かった久我美子が行動的な現代娘を好演して、意外な一面を見せている。
彼女の若さから来る遠慮会釈のない言動がそれまで平穏だった弁護士家庭にさまざまな波紋を巻き起こす。
だがそんな厄介者の彼女がそれほど嫌みに感じられない。
むしろ本音で生きる爽やかさ、言いたいことを全部言ってしまう率直さが可愛い。
だから映画の中では彼女がいちばん生き生きしており、これはもうけ役である。
原作 川端康成 脚色川島雄三/田中澄江/井手俊郎
撮影 飯村正 音楽 黛敏郎
出演 森雅之/原節子/久我美子/香川京子/石浜朗
丹阿弥谷津子/菅井きん/南美江
1958/東京映画
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