マーティー 55米
MARTY
■製作 ハロルド・ヘクト/バート・ランカスター
■監督 デルバート・マン ■原作・脚本 パディ・チャイエフスキー
■撮影 ジョセフ・ラシェル ■音楽 ロイ・ウェッブ
■出演 アーネスト・ボーグナイン/ベッツィ・ブレア
エスター・ミンチオッティ/オーガスタ・チオリ
30を過ぎてまだ独身の醜男が不美人の高校教師と恋に落ちるというあまり当たりそうもない地味な映画。
これを悪役専門でいかつい顔のアーネスト・ボーグナインが演じている。
脇役専門のボーグナインにとってはもちろんこれが初の主演映画。
お相手の高校教師はベッツィ・ブレア。当時ジーン・ケリーと結婚していた女優である。
どちらも華やかなこととは無縁にひっそりと生きている男女を好演している。
だがこの地味な映画がその地味さゆえに逆に新鮮で、この年のアカデミー作品賞を獲得している。
舞台はニューヨークの下町ブロンクス。
ここで肉屋の店員をしているボーグナインは母親とふたり暮らしの独身男。
店では愛想がよく誰からも愛されている男だが、こと恋愛に関しては臆病で今だにガールフレンドがいない。
そんな彼がある夜、友人に誘われて厭々出かけたダンスホールでひとりの女性と知り合う。
誰からも声をかけられずホールの隅にさみしく座っていた高校教師のクララである。
こちらもマーフィー同様恋愛経験のない真面目だけがとりえというオールドミスである。
そんなふたりが不器用に近づき恋に落ちる。
アメリカ人といえば誰もが遊び上手で恋愛にもスマートだとばかり思っていたが、この映画でそうした思いこみが間違っていたということがよく分かる。
そうした考えは作られた偏見だということをこの映画は教えてくれる。
ハリウッドの恋愛映画といえば美男美女が登場するのが通り相場だが、この映画はそれを逆手にとることで成功した。
押しの強いボーグナインがそのイメージを180度変えて恋に臆病な男を自信なげに演じているのが印象に残る。
いつもは憎たらしいほどの存在感を見せる彼がここでは痛々しい子犬のように見えてくる。
そしていつしかそんな彼を応援する気持ちになってくる。
この初主演映画で彼はアカデミー主演男優賞を受賞している。
★アカデミー作品賞、監督賞、脚色賞、主演男優賞(A・ボーグナイン)
カンヌ映画祭グランプリ
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