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ブライアン・デ・パルマ監督といえば、ヒッチコックのエピゴーネンといった評価がまず最初にイメージされる。
それほど初期の作品はヒッチコック作品の模倣、流用が数多く行われているのだ。 だが後にはそうした評価から徐々に脱して、独自の映像世界を確立するようになっていく。 ストップ・モーション、スロー・モーション、長回しといったふうに作品ごとに新しい撮影テクニックを駆使しながら、血と暴力の世界をスタイリッシュに描いていく。 その感性は今やヒッチコキアンとしてのイメージを完全に払拭したものになっている。 だが、そうはいいながらも彼の代表作を考えてみると、皮肉なことに「ヒッチコックの模倣者」と呼ばれた70年代の作品に集中してしまうというのもまた事実なのだ。 例えば彼の最高傑作である「ファントム・オブ・パラダイス」にしても、また彼の名声を確立するきっかけとなった「キャリー」や「殺しのドレス」にしても、すべてこの時代のものである。 おそらくこれらの作品で、ヒッチコックの呪縛から逃れようと悪戦苦闘することで代表作となるような作品が生まれてきたように思えるのだ。 そういった意味でもデ・パルマ監督を考える場合にはヒッチコックという存在をぬきにはできないわけで、彼にとってその存在がいかに大きかったかということになるわけである。 |
ファントム・オブ・パラダイス(74) | キャリー(76) | 殺しのドレス(80) |
ミッドナイトクロス(81) | スカーフェイス(83) | ボディ・ダブル(84) |
アンタッチャブル(87) | カジュアリティーズ(89) | 虚栄のかがり火(90) |
レイジング・ケイン(92) | カリートの道(93) | ミッション・インポッシブル(97) |
スネーク・アイズ(98) | ミッション・トゥ・マーズ(00) | ファム・ファタール(02) |
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NBC管弦楽団の第1フルート奏者で作曲家でもあるカーマインのもとに生まれたコッポラは父と同じ音楽の道には進まず、ホフストラ大学で演劇を学んだ後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の映画コースへと進んでいく。
卒業後はロジャー・コーマンのもとに弟子入りし、様々な裏方を経験しながら映画製作を学んでいく。 そして「パリは燃えているか」「雨のニューオリンズ」といった作品のシナリオを書き、さらに70年に書いた「パットン大戦車軍団」でアカデミー脚本賞を受賞するといったぐあいに監督としてよりも先にシナリオライターとして名をあげることになるのである。 そして72年に「ゴッドファーザー」を監督することで初めて監督としての名声をえることになる。 さらに「カンバセーション・盗聴」でカンヌ映画祭グランプリを、「ゴッド・ファーザPART2」では前作に続いてのアカデミー賞連続受賞など、いっきに巨匠としての地位を確立することになる。 だが好事魔多しの喩えがあるように、続く「地獄の黙示録」「ワン・フロム・ザ・ハート」の失敗によってコッポラは長い不振の時代へと突入していくことになる。 とくに「地獄の黙示録」の失敗はその壮大さゆえに今も語りぐさとなっているほどで、膨大な製作費は結局彼のプロダクション「アメリカン・ゾーイトロープ」の倒産へとつながっていくことになるのである。 結局、現在の彼は「ゴッドファーザー」の遺産によって辛うじて食いつないでいるといった状態であるが、近作「ジャック」や「レインメーカー」では小品ながらもキラッと光るものが見られ、肩の力のぬけたよさが感じられる。 この方向に何か次の可能性が隠されているように思うのだが、果たしてどうであろう。 ファンとしては「ゴッドファーザー」のコッポラだけで終わってほしくないというのが偽らざる心境なのである。 |
ゴッドファーザー(72) | カンバセーション・盗聴(74) | ゴッドファーザーPART2(74) |
地獄の黙示録(79) | ワン・フロム・ザ・ハート(82) | アウトサイダー(83) |
コットン・クラブ(84) | ペギー・スーの結婚(86) | 友よ、風に抱かれて(87) |
ゴッドファーザーPART3(90) | ジャック(97) | レインメーカー(98) |
ピーター・ウィアー/ PETER WEIR |
ピーター・ウィアーの作品には明確なテーマが一貫して流れている。
それはひとことで言えば「異文化同士のぶつかり合い」といったものである。 お互いに未知な文化同士が出会うところに生じる衝突、軋轢といったもの、そこで動きはじめる人間の葛藤をさまざまな角度から描いていくというのが彼の映画の変わらざる姿勢である。 まず彼が注目され始めるきっかけとなった作品、「ピクニック・at・ハンギングロック」は目に見えないエア・ポケットのような異空間、存在するかどうかも定かでない未知の領域に女生徒たちが誘われるようにして忽然と姿を消してしまうといった物語であった。 さらに続く「誓い」ではオーストラリアとトルコの文化の衝突が戦争の背景として語られている。 また、初のハリウッド進出となった作品、「刑事ジョン・ブック/目撃者」ではアーミッシュ社会との出会いが、「モスキート・コースト」ではジャングルという未知なる原始に悪戦苦闘する家族の姿が描かれる。 また「いまを生きる」では神秘的な詩の世界、「グリーン・カード」では永住権取得の物語、「フィアレス」では航空機事故による神秘的な死の体験を、さらには「トゥールンマン・ショー」に至っては人工的に作られた世界の物語といったぐあいにさまざまな形での文化の出会いが描かれていく。 ピーター・ウィアーはこうした衝突から生まれるダイナミックな人間ドラマを繰り返し描くことによって、より明確なアイデンティティーの獲得と独自の視点からの文明批判を目指しているように思われるのである。 |
ピクニック at ハンギングロック(75) | 誓い(81) | 刑事ジョン・ブック/目撃者(85) |
モスキート・コースト(86) | いまを生きる(89) | グリーン・カード(90) |
フィアレス(93) | トゥルーマン・ショウ(98) | マスター・アンド・コマンダー(03) |
ウォルフガング・ペーターゼン/ WOLFGANG PETERSEN |
スーパー・ヒーローが破天荒な活躍をするといった現実離れした世界ではなく、どちらかといえば等身大に近いような男たちが活躍するアクションを得意とする監督である。
そしてそうした種類の男を描かせると今や彼が第一人者といえるのではなかろうか。 手に汗握る絶体絶命の危機のなかを最後まで諦めずにトライすることで、なんとか活路を見いだしていくといった設定が多く見られるが、それは初期の傑作「Uボート」の頃から変わらず続く世界である。 そうした設定の内容も作品ごとに新しいアイデアを盛り込むことで趣向を変えて描いていく。 さらにそのハードルをどうやって乗り越えていくかといった描き方も常に緊迫感たっぷりで、いささかの破綻も見せない手堅さである。 そうした職人としての芸は近作「エアフォース・ワン」に見られるように、とみに磨かれてきたように思われる。 もともとはドイツ映画界の出身で、ニュージャンーマン・シネマ隆盛の一翼を担った時代もあったのだが、「Uボート」「ネバーエンディング・ストーリー」といった大作の成功によってハリウッドでの映画つくりへと転身し、そのスケールの大きさがハリウッド映画の特質によく合ったようで、その後の活躍へとつながっているのである。 |
U・ボート(81) | ネバーエンディング・ストーリー(84) |
第五惑星(86) | 仮面の情事(90) |
ザ・シクレット・サービス(93) | アウトブレイク(95) |
エアフォース・ワン(97) | パーフェクト・ストーム(00) |
トロイ(04) | ポセイドン(06) |
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映画つくりの巧みさやヒット作を連発するといった点において今やスピルバーグと並ぶハリウッドを代表する監督といえるだろう。
1981年に「殺人魚フライング・キラー」というB級作品でデビュー、以降の作品はことごとくがヒットをし、しかもどれもが質の高い娯楽作品ぞろいという、ハリウッドでももっとも信頼度が高く、安定感のある監督である。 そうした自信と信頼が「タイタニック」という史上空前のメガ・ヒットにつながっていったのであり、それによって映画史のみならず、彼自身の監督としてのひとつの頂点をも示すことになったのである。 彼の映画つくりの特徴のひとつに「水」にたいする強いこだわりがあげられる。
さらにもうひとつの特徴として「強いヒロイン」の登場が挙げられる。
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ターミネーター(84) | アビス(89) |
エイリアン2(86) | ターミネーター2(91) |
トゥルーライズ(94) | タイタニック(97) |
アバター(09) |
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彼のフィルモグラフィーを眺めているとおそらく彼こそがハリウッドの古きよき伝統を受け継いだ正統派の監督なのではなかろうかというふうな思いにとらわれる。
多岐にわたった題材で、観客をけっして飽きさせることなく、ストーリー・テリングの巧みさで観客をぐいぐいと引っ張っていく技術、どのような素材でも一定以上のレベルのものに仕上げてしまうという腕の確かさ、こういった仕事ぶりをみていると、それはあながち的の外れたものではなかろうというふうに思えるのだ。 フランク・キャプラ、ジョン・フォード、ビリー・ワイルダー、ウィリアム・ワイラーといった名監督たちが求め続けたアメリカ的な精神、正義や愛や笑いや涙、そうした今や失われつつある良質なものを現代的な視点から正面切って堂々と描いていこうとする姿勢からもそれはうかがえる。 作家精神を振りかざして独善に陥るなどといっこととは無縁の立場で、あくまでも映画のエンターテインメント性を最優先にしたオーソドックスでわかりやすい映画作りを目指しているのである。 まさにハリウッドの王道を行く監督のひとりといえるだろう。 |
スプラッシュ(84) | コクーン(85) | ウィロー(88) |
バックマン家の人々(89) | バックドラフト(91) | 遙かなる大地へ(92) |
ザ・ペーパー(94) | アポロ13(95) | 身代金(96) |
エドTV(99) | グリンチ(00) | ビューティフル・マインド(01) |
ミッシング(03) | シンデレラマン(05) | ダ・ヴィンチ・コード(06) |
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